最大の転機は『遊戯王』、津田健次郎が忘れられない「レジェンド声優」からの“呼び出し”
■「声優」と「俳優」の違いはない
――津田さんの頑固な一面が垣間見えたんでしょうか。 津田 どうなんでしょう。監督の言うことを聞かなかったわけではないんですけど、「このセリフはこうやりたい」というのがわりと強いタイプではあります。もちろん監督から言われれば変えますし、当時のキャリアではテクニカルな部分で変えられなかったのかもしれませんが、収録の中で「あ、こいつ、変えないんだ」と思われたことがあったのかもしれません。だから三ツ矢さんの言葉はありがたく、非常に愛のある言葉だなと思いました。 ――そんな『遊☆戯☆王』は、声優歴が浅い中での初めてのメインキャストだったかと思います。舞台などのお芝居との違いは感じましたか? 津田 それはそんなに意識しませんでした。映像作品だって作品ごとに違うし、舞台も200人クラスの劇場と1000人クラスの劇場ではスタイルを変えるし、内容的にもコメディとシリアスではまったくアプローチが異なるし、それぞれ演じる人物のキャラクターもさまざまです。だから、声優と俳優との違いというよりは、作品ごとのアプローチの違いしかないと思っています。たとえば、「口パク」は声優にしかありませんが……。 ――映像内のキャラクターの口の動き、のことですね。 津田 僕はそれもあまり気にしていません。口パクを合わせることによって芝居が死ぬこともあるし、僕はそれが一番ダメだと思っています。ならば、「口パクに合わせなくても、いい芝居をすればいいじゃないか」というタイプなんです。もちろん合わせる努力はしています。でも、アニメ作品を観てセリフに感動することはあっても、「口パク、合ってるね」と感動する人はひとりもいないじゃないですか。 ――たしかにそのとおりですね。ちなみに、津田さんはこれまで「壁」を感じた経験はありますか? 津田 それはもう、いまでもたくさん感じています。それまでパッとやっていたことでも、もう1回やってみると違う面に気付いたりする。そんなとき、これまでと違ったアプローチをどんどん試していかなきゃならないなと、考えたりしますね。 ――ベテランでもそういった局面があるんですね。津田さんがずっと進化し続け、売れっ子で居続ける理由が垣間見えた気がします。ちなみに、ご自身の作品はご覧になりますか? 津田 いや……アニメもドラマや映画も、見ません。自分が出た作品を見るとストレスが溜まるんですよ。 ――なぜですか? 津田 「もう1回やらせてほしい」という気持ちが大きくなっちゃうんですよ。もちろん撮影時点では監督さんのOKは出ています。でも、「うわあ、もっとこうしたらおもしろくなったのになあ。ううっ……!」と思いながら見てしまうんですよ(笑)。
有山千春