「彼はあまり疲れないタイプだから」藤井聡太の師匠・杉本昌隆が口にしていた“ある予言”…渡辺明の戦略ズバリ“灼熱の名古屋決戦”のウラ側
7月6日から7日にかけて愛知県・徳川園で行われた将棋の第65期王位戦第1局。藤井聡太王位(七冠)と挑戦者の渡辺明九段による対局は、千日手指し直しの末、想像をはるかに超える激闘となり……。“灼熱の名古屋決戦”を現地取材した記者が観戦記を寄せた。(全3回の2回目/#1、#3へ) 【写真】「1対99からの大逆転」藤井聡太が苦しそうに天を仰ぎ、渡辺明は頭を抱え…“灼熱の王位戦”現地写真や「W藤井、望外の2ショット」「ファンへの神対応」も一気に見る(全100枚)
「藤井王位がちょっと不利」師匠・杉本昌隆八段の見立て
この日、愛知県名古屋市の最高気温は37.7度に達していた。 指し直しが始まり、夕暮れ時になっても気温は35度を超えたままである。暑さはまるで和らぐ気配がなかった。 指し直し局は「渡辺有利」だと言われていた。 一般的に勝率が高いとされる先手番の権利が渡辺明九段に移ったことも一因だが、藤井聡太王位よりも持ち時間を多く持ってスタートできることも、大きな理由である。具体的には藤井の1時間に対して、渡辺は2時間20分。1時間20分のアドバンテージを持って、指し直しに臨めることになっていた。 対局における持ち時間は、スタミナのようなものだ。 勝負所で持ち時間が多く残っていれば、惜しみなく時間を注いで局面に没頭できる。しかし持ち時間が短ければ、それは難しくなる。読みの精度は落ち、焦りも生まれやすくなるだろう。しかも2日制の対局ともなれば、終盤は心身の疲労もピークに達し、錯覚を起こしやすくなる。持ち時間を使い切ってからの秒読みで起きた逆転劇は、枚挙にいとまがない。 「藤井王位だけ消耗しているんですよ」 藤井の師匠である杉本昌隆八段は、指し直しが始まる際に大盤解説会でそう切り出している。地元・名古屋での対局ということもあり、両者の持ち時間の差については、中日ドラゴンズの喩えを使って、こう客席に説明してくれた。 「野球で言えば、藤井王位は先発ピッチャーが5回まで0点で抑えて、いまは中継ぎや抑えの藤嶋(健人)投手やマルティネス投手が投げて、0点で抑えている状態です。渡辺さんの方は先発ピッチャーがずっと1人で抑えている。藤井王位が消耗している分、ちょっと不利に見えると思います」 素直に考えれば、渡辺が優位に進めていくのは間違いない。だが相手は現役最強棋士である藤井だ。従来の物差しでは測れない、桁違いの強さがある。間近で見続けてきた師匠は一言だけ付け加えた。 「だけど、彼はあまり疲れないタイプだから。ここから新たな戦いが始まるというところですね」 指し続けることに関して言えば、将棋界のトップを走る21歳が疲れ知らずのスタミナを持つことを師匠はよく知っている。 それは、まるで数時間後に起きるドラマを予言したかのような言葉だった。
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