ドラマで話題の「偽装強盗」…現実では「重い罪」も 元捜査1課刑事が解説
■「偽装強盗」をする背景・事情で…もっと「重い罪」も
ただ、ドラマのケースが実際にあれば、さらに重い罪に問われる可能性があるといいます。それは「詐欺罪」です。 ケーキ店店主の正義は、経営が苦しく、壊れたオーブンやミキサーの買い替えができないことから、友人の荒木の提案に乗る形で「偽装強盗」に手をだしました。目的は、被害を装うことで、加入していた高額な損害保険金を得ることでした。そのため、わざわざオーブンやミキサーだけをバールで叩いて壊すよう、打ち合わせもしていました。 「強盗被害を装って保険金をだまし取る、このドラマのケースは、人を欺いて財物を交付させるという詐欺罪の要件そのものです。嘘の事件で保険金を申請した時点で、保険金詐欺が認められ、たとえ結果的に保険金が下りなかったとしても詐欺未遂罪になります」(元捜査1課刑事・佐々木成三さん) 詐欺罪も詐欺未遂罪も罰則は同じ「10年以下の懲役」、罰金刑はありません。もし保険金が得られなかったとしても、正義らは「10年以下の懲役刑」に問われる犯罪に手を染めたことになるのです。
■「偽装強盗」大半は…警察の目は欺けない
実際に行われれば、重い罪に問われる可能性のある「偽装強盗」。しかし、警察の捜査の目をかいくぐって「偽装強盗」がまかりとおる可能性はほとんどないといいます。 「たとえば店員が店の金を使い込んでしまったことがバレるのを防ぐため、自らを刃物で傷つけたりして強盗被害を装うというケースもありますが、聞き込みで得られた証言と現場の状況を照らしあわせたり、ケガをさせられたと主張してきた場合、傷の深さや方向などを確認したりすると、本当に強盗に襲われたのか、すぐに疑念が浮かびます」 「綿密な現場検証も行われますし、しっかりと捜査を積み重ねていけば、どこかに矛盾が出てくるので偽装強盗がバレないことはまずないと思います。ドラマのように、逃走の途中で覆面を外すような強盗犯がいれば、防犯カメラでリレー形式で追って行ったらすぐ身元が特定されて、荒木たちは早晩逮捕されることになるでしょうね」(元捜査1課刑事・佐々木成三さん)