最新のポルシェなのに「幌の脱着」が手動な上に何分もかかるってどういうこと!? 超面倒な718スパイダーのルーフの謎
70年以上の歴史を持つポルシェのオープンモデル
ポルシェが911カブリオレを発表したのは1983年のことですが、以来40年以上をかけて進化してきたもの、それがオープンルーフ機構かもしれません。 【画像】手動でソフトトップを開閉するポルシェ718スパイダーRSの画像を見る なにしろ、当初は手動オープンで、面倒な手順がいくつもあったのです。丈夫な布でできたソフトトップをクニャクニャと畳んだり、フロントスクリーンの上にあるレバーでロックしたり……。それでも、リヤエンドには畳んだ幌が見え隠れしたりして、メルセデス・ベンツSLやジャガーXJ-Sコンバーチブルのボディ同色のハードカバーが羨ましくなったりしたものです。 が、最新型はもちろん電動、ワンタッチで開閉は約12秒しかかからない上に、時速50km/hまでなら走行中だって操作できるのです。いまや911カブリオレはプレミアムな高級車ですから、当然といえば当然の機能といえるでしょう。 一方で、同じポルシェの屋根開きでも「なんじゃこりゃ!」と開いた口が塞がらないほど面倒なモデルがあるのです。いわずと知れた718スパイダーのソフトトップは、およそ20もの作業が求められ、手際よく進めたとしても2分、いやソフトトップをクルクル畳むのに少しでも手間取ったりしたら3分の大台も見えてくるはず。 一体、この差はどういうことなんでしょうか。 911に次ぐポジションとはいえ、あまりに手間ひまかかり過ぎ! 718だってまあまあのプライスなのに「これはないんじゃないの」と感じる方は決して少なくないでしょう。20あるプロセスは当然すべて手動であり、ロックレバーやスナップの付け外しのように単純な作業はともかく、二分割されたソフトトップは(リヤスクリーン部とルーフトップ部)クルクル&クニャクニャと畳んで収納しなければなりません。
オープンドライブを楽しむためには相応の儀式が必要
これだけ篏合やジョイント、スナップが多いとなればどこか一か所でも不具合が生じるだけで完璧なルーフは望めないはず。正確なところは不明ですが、細かく分割してパーツが出ればまだしも、ASSY交換だったりしたら誰もがゾッとすることでしょう。電動でないだけましかもしれませんが(911にしろ、ボクスターにしろ電動ソフトトップもひとたび不具合が生じると個人で直すのは一苦労どころではありません)、自分でリペアをする方にはくれぐれもお気を付けいただきたいポイント。 とはいえ、ポルシェの側に立ってみると、あるいはちょっと古いエンスージアストとしてみると、こうした面倒なソフトトップというのも「あり寄りのアリ」かもしれません。というのも、718スパイダーの祖先をたどれば964や930、そもそもは356の時代から存在した「スピードスター」にほかならず、これらのモデルは共通して「簡便なソフトトップ」というのがデフォルトだったから。 また、雨風をようやくしのげるくらいのシンプルさですから、幌を閉じた際もさほど大げさでなく、オープントップのプロポーションを損ねないスタイルというのも間違いないところ。 シンプルゆえに構成部品も何本かの骨組みとキャッチくらいですから、開閉作業にもさほどの苦労はなく、どこかの小さな部品がパキッと折れたりすることも少なかった模様。もっとも、雨風をしのぐ機能もまた最低限だったこともたしかで、このあたりは最新の911カブリオレの足もとにも及ばないかと(布の表面には耐熱・耐候コーティングがなされ、複層構造によって通常のハードルーフと同等の快適性、防音性を誇っています)。 いってみれば「ピュアなスポーツカー向け」という解釈もでき、ちょっと変態じみたエンスージアストは喜んでチマチマ開け閉めしていそうです(笑)。また、ポルシェにいわせたら「シャッター付きのガレージがあれば開閉の頻度はさほどあるわけでもなし」と鼻をくくったような返答になるかもしれません。 いずれにしろ、20ものプロセスを経ねばならない設計はいくらバイザッハといえども褒められたものではないはず。いっそのこと、356当時の設計を流用したほうがまだ納得できるかも、といったらポルシェ信者に石を投げられるかもしれませんがね(笑)。
石橋 寛