【夏休みだから知っておきたい】子どもの体験は贅沢品ではなく人生の必需品 生まれた環境が影響する「体験格差」とは?
自分もしたことがないから、子どもにどうしてあげればよいのか分からないのだと思います。体験の価値そのものは、体験を通じて感じていく部分があるのだと思います。この点はすごく深いところです。もちろん、体験を強要する社会というのも、生きづらいので、自然な生活の中でいろんな体験があるということが良いのですが、子どもたちの体験の機会、その選択肢には生まれた環境が影響していると思います。
子どもの体験を社会で支える
子どもの体験は、家族だけではなく、社会で支えるというふうに世の中を転換させていく必要があります。私たちが、トライアルとして、墨田区などと連携して取り組んでいる「ハロカルホリデーすみだ」という事業があります。区内の子ども1000人に対して、体験で使えるポイント5000円分を助成するというものです。応募は7月15日に締め切りましたが、2000人もの申し込みがあり、手応えを感じています。 重要なのは、子どもたちの体験の場を、地域でつくっていくことです。クラブ活動の先生とか、サービスを提供する企業だけではなく、今まで子どもに対して体験機会の提供をしていなかった大人たちが、自分たちで体験プログラムをつくって、手を挙げられる仕組みをつくりました。そうすることで、町工場でのワークショップ、銭湯の掃除体験、相撲部屋での体験など、墨田区ならではの体験の場ができました。 一度、こういうことをやってみると、どんどん面白い体験の場が生まれ、そうなってくると地域資源が豊かになり、子どもたちも自然といろんな体験ができるようになります。体験の場を提供する大人たちも、地域の子どものために何かしたいと思ってやっています。ただ、こういった活動を全部持ち出しで継続するのは難しいので、子どもたちには助成したポイントから参加費を出してもらうようにします。そうすると、地域の大人たちも継続して体験の場を提供しやすくなると思います。 子どもはこうした機会を通じて、普段はやったことがないことを体験することで、自分の視野が広がり、自分の好きなもの、夢中になれるものを見つけやすくなると思います。 さまざまな機会を通じて、子どもたち自身が自分の人生を選べるようにしていくということが必要です。何かを選択したり、自分の将来を想像したりするためには、「体験」が欠かせないのです。ただし、誤解してほしくないのは、「もっと子どもに体験させなきゃいけない」と、強制してしまうことです。あくまでも、選択肢をつくることが大切です。(聞き手・構成/編集部 友森敏雄)
今井悠介