福島原発ルポ:続く長き闘い 緒に就いたばかりの廃炉
「水」とデブリの「二重苦」
東電は11月7日、専用の装置を使ってつかんだ5ミリ程度のデブリを2号機の原子炉格納容器から取り出す作業を完了した。本格的なデブリ取り出し工法の検討に生かされる。1~3号機の格納容器内には計880トンのデブリがあると推定され、「廃炉最大の難関」となっている。廃炉コミュニケーションセンターの木元崇宏副所長は「事故から13年半経ち、ようやく廃炉の一歩を踏み出したことになる。だが、作業は緒に就いたばかりの段階だ」と語る。 各所で着実な前進はあるものの、廃炉の大きな障害の一つとなっている汚染水の抜本的解決は見えていない。原子炉建屋へ流入する地下水や雨水は日量60トン。原子炉冷却のための注水も続けており、汚染水は毎日80トン(23年度平均)発生している。
東電は多核種除去設備(ALPS)などで汚染水を処理したうえで、敷地内のタンクで貯蔵を続けている。23年8月から処理水の海洋放出を始め、24年11月5日までに計10回、7万8285トンを放出した。化学的な性質が水に似ていて除去できない放射性物質トリチウムの総放出量は約14.8兆ベクレルになるが、東電は周辺海域のモニタリングで異常はないとしている。 だが、敷地内に貯蔵される処理水の海洋放出には今後30年かかるとみられているうえ、地下水や雨水の流入による汚染水発生を完全にゼロすることは困難だ。「水」の処理に手間取って林立するタンクが減らなければ、今後取り出しが進むとみられるデブリの保管施設の設置など、廃炉計画全体に影響する。 水とデブリ。廃炉作業の「二重苦」をどう克服するのか。木元副所長は「汚染水の量をどのように抑制するかが課題だ。安定的に増えないようにできれば、廃炉計画のメドもつけられる」と語った。 写真:nippon.com編集部・土師野幸徳撮影(提供写真は除く)
【Profile】
住井 亨介 全国紙で警視庁や宮内庁の担当記者、海外特派員などを経験し、現在ニッポンドットコム編集部チーフエディター。ハーバード大学客員研究員として「北朝鮮による拉致問題」を研究した。国内外における幅広い分野のニュースに関心を寄せる。