福島原発ルポ:続く長き闘い 緒に就いたばかりの廃炉
建屋の直下、高まる放射線量
広大な敷地を移動するマイクロバスの車窓からは、汚染水から放射性物質を除去した処理水を貯蔵するタンク群、廃棄物を保管するコンテナ群が所狭しと並び、かつて使われていた発電用の大型タービンなどがさびたままあちこちに放置されているのが目につく。
がれきはおおむね撤去されているが、津波によって大きくへこんだ貯水タンクなど、事故を伝える遺構として残されている物も点在する。5~6号機を望むデッキには、処理水を海洋放出するためのトンネル掘削に使われた「シールドマシン」の一部が記念として保存されている。
バスを降りて4号機の海側から陸側へ徒歩で回り込む。高台から見た建屋、構造物を見上げるように進むと、巨大なダクトの切断面が無残な姿を見せている。かつては1~4号機から排気塔へつながっていたが、廃炉作業の邪魔になるため切断されたものだ。3号機の構造物には、付着した放射性物質を飛散させないよう吹き付けられていた緑色の薬剤がうっすらと残り、事故直後の痕跡を示している。
3号機からさらに北へ、2号機の足元へ進むに従い、放射線量が高まってくる。着用したベストの胸ポケットにしまった個人線量計の数値が気にかかる。2号機では、事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った「核燃料デブリ」の取り出し作業が行われており、搬出口付近では防護服に身を包んだ作業員の姿が見える。
再び海側に向かうため、2、3号機の間を通り抜ける。空間線量計の数字は高まり、毎時240マイクロシーベルトを示した。建屋の損傷具合をじっくり見る間もなく、案内する担当者に先を促されて小走りする。担当者は「数年前は毎時300マイクロシーベルト以上ありました」と話すものの、いまなお放射線の影響は決して無視できない。
海側に出ると、今年3月に完成した津波対策の防潮堤が南北約1キロにわたって延びている。コンクリートの部材を組み合わせて高さ13.5~16メートルの壁が築かれ、1~4号機を津波から保護する。発生が切迫していると評価される日本海溝津波にも対応できるもので、東電は「万一の際にも汚染水が外部へ流出して、環境を汚染するリスクを低減できる」と説明する。