歴史受け継ぎ、縁つなぐ 松屋銀座「開店100周年記念企画検討部」部長・清水麻帆さん
「百貨店にはいつも季節があります。足を運んでお正月を感じてください」 3日の初売りを前に、巳年の縁起物を手にほほえむ。松屋銀座開店100周年企画検討部の旗振り役だ。「社内部活の扱いで、有志20人が集まった。本業務の合間を縫って、いろんな企画を仕込んでいます」 松屋銀座の開店は大正14(1925)年。今も当時の建物で営業している。「歴史を知るほどに、困難を乗り越えてきた重みに身が引き締まる」。建築中に関東大震災に見舞われた。先の大戦でかろうじて焼け残った店舗もGHQ(連合国軍総司令部)に接収され、昭和28年にやっと営業再開。吹き抜けホールに設置した空中エスカレーターが最先端スポットとして人気を呼び、石原裕次郎主演映画「銀座の恋の物語」のロケ地にもなった。 「百貨店はヒトとモノが集まるトラフィックの交流点。面白いコトが生まれる場所」。5月1日の開店記念日を目指した100周年企画のひとつが老舗の銀座木村屋とコラボした「銀座コッペパンプロジェクト」だ。〝具〟も、レストランや菓子など銀座を代表する名店から納品してもらい、銀座を盛り上げるという。 大学時代に学芸員の資格を取得するほど展覧会などに興味があり、松屋の催事も気になっていた。「ムーミンなどの北欧文化を伝えたり、国内外の秀逸なデザイン雑貨をセレクトした売り場があったり、独自のカルチャーにひかれました」 埼玉県坂戸市出身で百貨店の最初の思い出は近くの街、川越市にある丸広百貨店だ。「ちょっといいお洋服を買ってもらった、特別なおでかけ場所」 各地で閉店が相次ぐ苦境の百貨店業界だが、松屋は地方の同業者に、銀座で使った装飾品を再利用提供するなど魅力アップを支援している。大手百貨店が経営統合で生き残りを図るなか、東京ローカルデパートとして独自路線を突き進んでもいる。「銀座のつながり、百貨店のつながり。お客さまに喜んでいただいてこれからの100年もご縁をつなげるよう、100周年事業をやり遂げたい」 (重松明子)
■しみず・まほ 平成4年5月、埼玉県生まれ。早大文化構想学部卒。平成27年、松屋入社。婦人雑貨、デザインコレクション売り場を経て、販売促進やプロモーション企画を担当。現職は顧客戦略部顧客政策課専任係長。