日本の動画コンテンツ市場、どう勝ち抜くか(5)DAZN
イギリスの動画配信大手パフォーム・グループは2016年8月、日本でスポーツ専門のインターネット動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」を開始した。現在、Jリーグの全試合や、巨人を除くプロ野球11球団の主催試合を含め、国内外の各種スポーツを年間約1万試合以上、ライブおよびオンデマンドで配信している。DAZN JAPANのエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるマーティン・ジョーンズ氏(46)は、今後について「放送するスポーツの種類を広げ、すでに放送しているスポーツを深掘りしたい」と語った。 【グラフ】日本の動画コンテンツ市場、どう勝ち抜くか(1)動画はネットで観る時代に
それまでは複数の動画サービスと契約する必要あった
―― 進出先として日本を選んだ理由は何でしょうか。 ジョーンズ 決めた理由はいくつかあります。スポーツファンが自分たちの応援するスポーツに対して情熱的だったこと、モバイルのインターネット環境が日本では整備されていたことなど。しかし一番の大きな理由は、スポーツの視聴環境が整っていなかったことがあります。われわれが進出するまで、日本でスポーツを動画で楽しむためは、複数の動画配信サービス会社と契約しなければなりませんでした。なぜなら、自分のひいきチームの試合は、1社のサービスだけがすべて放送してくれるわけではありませんから。これでは、利用料金が高くつきます。この日本市場に、われわれの1パッケージで見られるサービスを提供すれば成功できるだろうと考えたのです。 ―― 日本での事業の現状を教えて下さい。 ジョーンズ 加入者数は非公表ですが、日本では当初の予想を上回るようなレベルで成長をしています。現在、130種類以上のスポーツコンテンツを配信しています。日本でこれほどの数のスポーツコンテンツを提供しているところは、他にありません。それが可能なのは、チャンネル数に制限がないインターネットの動画配信サービスだからこそでしょう。
J3ファンは「DAZNのおかげ」と言ってくれる
―― 日本市場において競合と考えている会社はどこでしょうか。 ジョーンズ 衛星放送など、スポーツコンテンツを放送する放送局は競合といえますが、インターネット上のスポーツ専門の動画配信サービスに限定すれば、競合がいません。ただ、コンシューマーの時間を取り合う、という意味では、さまざまな企業が競合になりえます。 ―― 日本の地上波テレビ局も競合ですか。 ジョーンズ もちろんです。パートナーにもなりえますが、同じ時間にコンテンツを放送し、ユーザーがどちらを見るかを検討する、という面で考えると競合といえます。 ―― 日本で人気のスポーツコンテンツは何ですか。 ジョーンズ サッカーのJリーグです。ただ、プロ野球も昨年3月から11球団の試合の動画を配信しており、ユーザー数が伸びています。 ―― Jリーグを全試合パッケージで2年間放映した手応えはどうでしょう。 ジョーンズ 非常にポジティブに捉えています。特にJ3のファンは今まで放送されなかった試合を見られるようになり、「DAZNのおかげ」と言ってくださる人が多かったですね。 ―― Jリーグが事業の柱ですね。 ジョーンズ Jリーグはサービス開始時からの重要なパートナーですが、当社は、幅広いスポーツコンテンツの提供を目指しています。Jリーグとともに、プロ野球など他のスポーツも重要です。 ―― Jリーグの独占放映権を獲得したというニュースは衝撃的でした。今後、他の国内スポーツの放映権も独占するつもりですか。 ジョーンズ 独占できれば素晴らしいのですが(笑)、DAZNがすべての日本のスポーツを独占することはあり得ません。ユーザーにより良いコンテンツを届けるのがDAZNのミッションですが、すべての国内スポーツとなると、ものすごくコストがかかります。どのスポーツを放送するのか、われわれは決断しなければなりません。 ―― 配信するスポーツコンテンツの数は今後も増やしていく方針ですか。 ジョーンズ スポーツの種類を広げることと、すでに放送しているスポーツを深掘りすることの両方に取り組みます。深掘りとは、例えば野球やサッカーなら、日本に加えて他国のプロリーグも放送するなど、同じジャンルの中でコンテンツの種類を増やす、という意味です。 ―― 日本人にも海外サッカーファンは多くいます。現在、欧州チャンピオンズリーグやイングランドのプレミアリーグ、スペインのリーガ・エスパニョーラ、イタリアのセリエAの一部を配信していますが、いずれはドイツのブンデスリーガなど含めすべての各国リーグをカバーしたい考えでしょうか。 ジョーンズ コンテンツの獲得に関して、チャンスがあれば常に狙っています。