〈靖国落書き男を逮捕〉日本に引き渡しならずも中国当局は“見せしめ”で身柄拘束。落書き模倣犯、NHK中国籍スタッフによる「南京大虐殺を忘れるな」との不適切発言など日中トラブル続々…
新たな落書き犯も身柄引き渡しはされない見込み
そもそも董容疑者は、ネットショッピングの商品を糾弾する映像で視聴者を集めたりする迷惑系ユーチューバーで、性犯罪で収監されSNSのアカウントが凍結された前歴があるとの情報もある。叩けばホコリはいくらでも出るような怪しげな人物なので、中国公安もその気になれば摘発する材料を探すのは難しくなかったことだろう。 「拘束された容疑は、日本に来る前の今年5月、ネット販売業者を脅して数百グラムの金を脅し取ろうとしたことなどとみられています。地元当局は、証拠品も押収しているようです」(外報部記者) だが、模倣犯はすでに生まれている。 「8月19日の未明に、またも靖国神社の石柱に、フェルトペンで書かれたとみられるトイレを意味する中国語の『厠所』や『軍国主義』など計6つの落書きが見つかったんです。前夜に不審な人物が石柱の台座に上った姿を防犯カメラがとらえていました。 犯人とみられる男は事件の数日前に知人らと来日して新宿区内のホテルに泊まり、現場には一人で行ったとようです。 この男も、犯行直後の19日の午前中に、羽田空港から中国に出国していました。董容疑者とまったく同じ手口の“ピンポンダッシュ”のような逃げ方です。男は落書きが発覚する数時間前にその写真を中国のSNSに投稿し『この後香港に行く』とも書いていました。 警視庁が引き続き捜査をしていますが、器物損壊などで逮捕状を取っても身柄引き渡しを受けられないのは董容疑者の事件と同じです」(社会部デスク) 靖国神社を巡っては、本殿に向かって中指を立てて侮辱するような写真が中国のSNSに多くアップされている(#1)ほか、今年8月15日の終戦記念日には境内で中国語でまくしたてる人物と参拝者の間で口論も起きた。 こうした騒ぎや2回の落書き事件の背景には、靖国神社が「軍国主義の象徴」と中国や韓国で認識されている現実がある。
領空侵犯を受けたなかで日中友好議員連盟が訪中
2回の落書き事件などは「単純粗暴犯」ともいえるが、8月の落書きはさらなる余波を誘発した。 「この落書き事件を伝えた8月19日午後のNHKの短波ラジオと衛星ラジオ、ラジオ第2放送の中国ニュースで、中国籍の40代の外部スタッフが原稿にはない発言をしました。NHKの説明では、落書きのニュースで、原稿にはない『「軍国主義」「死ね」などの抗議の言葉が書かれていた』との言葉を加えて伝えました。 さらにこのニュースの後に『魚釣島と付属の島は古来からの中国の領土です。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します』という中国語の発言と、さらに『南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな』との英語の発言を続けました」(社会部記者) 釣魚島とは沖縄県尖閣諸島の中国での呼称だ。NHKは8月22日に「日本政府の公式見解とは異なる発言」であり「NHKが、放送法で定められた担うべき責務を適切に果たせなかったという、極めて深刻な事態であり、重く受け止めています。深くお詫び申し上げます」と謝罪を表明したが、責任問題が本格化するのはこれからとみられる。 この中国籍の外部スタッフはNHKの関連団体と業務委託契約を結び、22年も前の2002年からニュース原稿の中国語への翻訳や読み上げの業務を行なってきた人物。 董容疑者や8月の落書き男のように、失うものがない日本から中国へ逃げ帰ればいいと考えるような立場ではなく、長年従事したNHKの仕事を失うことを承知したうえで腹をくくって発言したことになる。 NHKは損害賠償請求や刑事告訴も検討しているというが、実効性があるかは疑わしい。 日中間では、8月26日に中国人民解放軍の「Y-9」情報収集機が長崎県五島市の男女群島沖の日本領空を侵犯した。 「中国による領空侵犯は初めてで、日本への軍事的圧力を一段階高めた形だ。中国外務省が『恥ずかしい真似はやめろ』と自国民に警告しても、同省よりはるかに強い力を持つ軍が日本に圧力を強めている姿を示せば、国民はそれが習近平政権の意志だと受け止めるでしょう」と国際部デスクは話す。 ところが領空侵犯された側の日本からは、翌27日に二階俊博・自民党元幹事長を会長とする超党派の日中友好議員連盟の一行が2019年以来となる訪中を始めている。29日までの中国滞在中に中国外交トップの王毅(おう・き)共産党政治局員兼外相に会う計画を立て、習近平国家主席との面談も希望し、日中間の懸案解決を模索するとしている。 だが、領空侵犯を受けた側の国会議員の集団が、直後に相手国を訪問することがどういうメッセージを送ることになるのか、彼らは理解しているのだろうか。 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班
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