子どもは「車のスピード」を認識できない? 事故の75%が横断歩道で発生、4月春の全国交通安全運動で考える
児童の交通事故特性
「春の全国交通安全運動」が4月6日から15日までの10日間、日本全国で実施される。重点が置かれるのは、次の点だ。 【画像】えっ…! これが60年前の「海老名サービスエリア」です(計15枚) ・子どもにとって安全な交通環境を確保し、安全な横断方法を実践する。 ・歩行者優先を徹底し、思いやり/譲り合い運転を励行する。 ・自転車や電動キックボードなどを使用する際は、ヘルメットを着用し、交通ルールを守る。 子どもの歩行中の事故の「74.4%」が横断歩道である。なお、低年齢児の事故特性は次のとおりだ。 ・ボール遊びなどで、突発的な行動にでる(警察庁、子ども等の交通事故について。2017年) ・身長が低いため、大型車から見えにくい(警察庁、児童生徒の交通事故。2018年) ・児童の視野は大人の約70%しかなく、視認性が低い(JAF岡山。2020年) ・車の速度が速いのか、遅いのか認識しにくい(稲垣具志、東京都市大学。2016年) そこで本稿では、「見えないゴリラ」を模した久留米警察署の実験映像をもとに上記を解説し、車の速度が認識しにくくなる事象も含めて発達の観点から報告する。
児童の認知特性と事故
「見えないゴリラ」は心理学や高次脳機能に関わる人なら誰でも見たことがある有名な実験で、クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズの著書『錯覚の科学』に書かれている。この実験では、十数人の学生にバスケットボールの試合中の「パスの本数」を数えてもらう。試合中にゴリラが横切ったが、生徒の約半数はその存在に気づかなかった。 福岡県警久留米警察署は「注意の錯覚」と題した同様の実験映像を公開し、 「ひとつのことに注意すると、他は見落としやすい」 と警告している。久留米警察署の実験では、数人がボールをパスし、その間をマスコットキャラクターが通り抜け、気づいたかどうか尋ねるというものだ。上記の実験は主にドライバーへの注意喚起を目的としているが、その心理的特徴はボールに夢中になった児童たちのそれと似ている。 さまざまな研究者の報告によると、低年齢の児童たちの脳の注意機能はまだ発達段階にあるという。実際、警察庁が2022年に発表した「交通事故分析 幼児・児童」によると、事故全体の52.1%が16時から17時の間に発生しており、その多くが放課後に発生している。 これらの子どもたちが遊びに夢中になっていたかどうかは定かではないが、事故原因の最多が「飛び出し」で36.2%であることから、車に気づかずに飛び出してしまった可能性も考えられる。 一方、別の見方をすれば、気づいたものの、車との距離とスピードを見誤り、横断できると判断して飛び出したのかもしれない。東京都市大学の稲垣具志教授は、この懸念を実験で検証している。