平成最後、令和最初の月9 窪田正孝と本田翼で「ラジエーションハウス」
平成最後の、そして令和最初の月9となるドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系、月曜21時)が8日からスタートした。主人公の天才放射線技師・五十嵐唯織を演じるのは月9初主演の窪田正孝。相手役ヒロインの甘春杏は本田翼がキャスティングされた。新時代の月9は、どんな存在感を放ってくれるか。
月9とは何なのか 新時代のブランディング
フジテレビの月9枠自体は1960年代から存在するが、連続ドラマ枠の代表格としてステータスを確立したのは平成時代、90年代に入ってからだろう。「東京ラブストーリー」をはじめ、「101回目のプロポーズ」や「ひとつ屋根の下」、「あすなろ白書」や「ロングバケーション」、「ラブジェネレーション」など次々と高視聴率ドラマを連発。当時はCD黄金期でもあり、月9の主題歌に採用された曲の多くがミリオンセラーとなった。 そんな華々しい存在だった月9も、ネット時代に突入してテレビと人々との関り方、視聴スタイルなどが変化するにつれて、その存在感は徐々に落ち着いてきたようだ。 「リアルタイムの視聴率が人気のバロメーターとはいえない時代になってきて、逆にいえばドラマ自体をじっくり見せられる空気感が漂ってきたのでは。視聴率の数値的な部分は低くても、放送の前後にSNSなどで熱い話題が盛り上がるドラマも出てきたのが最近の傾向です。月9もそんな中で、高視聴率でヒットしなければ月9ではない、といった呪縛から解放されてきたといえるでしょう。では月9とはなんなのか。やはり飛び道具的にヒットをねらっていくのか。それとも、派手さよりドラマとしてのクオリティーの高さを突き詰めていくのかなど、新たなブランディングが求められていると思いますね」と、指摘するのはテレビ情報誌の40代男性編集者だ。
“縁の下のヒーロー”放射線技師にスポット
「ラジエーションハウス」は人気コミックが原作で、月9らしい豪華キャストがそろうが、8日に放送された第1話では、一部場面での演出に関し2001年の木村拓哉主演の月9「HERO」との類似点を指摘する声がネット上に躍った。どちらもフジテレビの鈴木雅之氏が演出を手掛けているうえ、音楽も服部隆之氏が担当していることから、わかる人にはわかる的なシャレ要素を意図的に織り込んだのかもしれない。 主演の窪田は天才放射線技師でありながらコミュ障な唯織役を、生き生きとこなしている。ヒロイン役の本田翼との相性も良さそうだ。本田は初の医師役だが、白衣姿がよく似合っている。人命に携わる物語なので基本的にはシリアスなドラマなのだが、この2人の掛け合いを中心にコメディー要素も随所に盛り込まれている。共演陣も広瀬アリスや遠藤憲一、浜野謙太、丸山智己、矢野聖人、山口紗弥加、鈴木伸之、浅野和之、和久井映見と充実。初回はどのドラマもキャストの顔見せ的要素に追われがちだが、患者役でゲスト出演したイッセー尾形も確固とした存在感で物語を引っ張り、最後まで飽きさせない内容だった。 放射線技師というポジションにはどちらかというと縁の下の力持ち的なイメージを持っていたが、病状の根源を突き止め、質の高い診療を支えるきわめて重要な存在であることがよくわかり、興味深かった。ドラマならではの演出もあるにせよ、あまり知られることのない職業の現場の様子を伝えようとする意欲も感じられ、お仕事ドラマとしても楽しめそうだ。プロデューサーの中野利幸氏は、同作の発表に際し、“縁の下のヒーロー”たちの物語と表現したが、その通り。新しい時代の月9も、ドラマの世界になくてはならない重要な存在になって欲しい。 (文・志和浩司)