「福岡ナンバーワン納税者になって社会貢献」日本に明太子を生んだ企業/「味は守るな」5代目社長の思い ~ふくや前編
◆創業者の教え「味は守るな」
もう一つ、創業者の教えとして受け継がれているのは「味は守るな」。 環境は日々移り変わるのだから、その変化に対応することが、「おいしい」の提供につながる――そうした考えがあったのです。 実際、ふくやの主力商品である明太子の味は日々変化を遂げています。 創業時に12~13%だった塩分濃度は、今や3~5%に。少ないおかずで白米をたくさん食べる文化ではなくなりつつあるため、それにあわせて味を改良しているのだと武浩氏は語ります。
◆ディフェンダータイプの経営者として
ふくやは、福岡をホームタウンとするサッカークラブ「アビスパ福岡」のサポーターでもあります。 元・サッカー少年であり、大のサッカーファンであるという武浩氏は、自身を「ディフェンダー(守り)タイプの経営者」だと分析します。 その裏には、「自分は創業者ほどイノベーティブではないし、この会社は自分が創り上げたものではない。 会社を大きく伸ばすタイプではないが、潰さない経営はできる」という、自身へのストイックな評価がありました。 とはいえ、守るだけでは勝てない。 商品を変えたり、新しいことにどんどんチャレンジしたりしつつ、理念をきちんと守りながら「会社を長く続けていくこと」を考えたい――武浩氏はそう語ります。 創業者の思いを後の世代へ伝えていくため、創業者夫妻をモデルにしたドラマ「めんたいぴりり」を企画したのも、武浩氏の取り組みです。 映画は博多華丸氏を主演に迎え、2023年夏に公開されました。
◆「常に新しい、おもしろいことをしている会社」でいたい
缶詰の中に明太子の粒や調味液を入れた商品「めんツナかんかん」、明太子をチューブに詰めた「tubu tube」……どれもふくやの人気商品です。 ユニークな商品を続々開発する背景には、武浩氏の「ふくやを、常に新しい、おもしろいことをしている会社と認識してもらいたい」という想いがありました。 ひときわ目を引くのが、明太子の量をチェックするセンサー「ふくやIoT」。 自宅の冷蔵庫に設置しておけば、明太子がなくなる前に、操作不要で新たな明太子が届く仕組みです。 ふくやIoTによって、「はじめは大切に少しずつ明太子を食べるが、賞味期限が近付くと慌ててたくさん食べる」という顧客行動が明らかに。 そこから「明太子1パックあたりのボリュームが大きすぎるのではないか」という仮説が生まれ、「めんツナかんかん」や「缶明太子油漬け」などといった常温商品の開発につながりました。
■株式会社ふくや
1948年10月、福岡市博多区中洲で創業。翌49年1月から、国内で初めて明太子の販売を開始する。「味の明太子」は博多明太子の先駆けとしてロングセラーに。2023年4月現在、従業員数579人(正社員268人)、2022年度の売上げ129億円。2002年には、第1回福岡県男女共同参画企業賞を受賞している。