「箱崎縞」を知ってますか? 先人の思いを令和に紡ぐ/福岡市
「普段使い」を求めて
東区の香椎出身で、古着好きの尾畑さん。高校卒業後に渡米してファッションを学び、帰国後は東京の専門学校に通いながら、アパレル大手「ユナイテッドアローズ」でデザインの仕事に携わりました。 「素材を生かした自分のブランドをつくりたい」と、31歳で退社して地元に戻ります。博多織の技術者養成学校で学び、“普段使いできる織物”を追い求めていた2014年、箱崎縞に出会いました。
織物の構造を分析したところ、綿から紡いだ状態の糸をそのまま使っていることが分かりました。現代の衣類より強度は劣りますが、糸が毛羽立ちやすく、ふんわりとやさしい肌触りになります。 「職業柄たくさんの生地を見てきましたが、こんなに素朴な素材は見たことなかった」と尾畑さんは言います。
製法や特徴を詳細に分析して20年、福岡県筑後市の織物工場に箱崎縞の”再現”を依頼します。完成した反物から洋服やストールなどをデザインし、令和によみがえった箱崎縞の衣類を完成させました。
カフェでふれる”味”
福岡市博多区御供所町にあるギャラリー「メゾンはこしま」では、箱崎縞のパンツ「はこパン」(税込み1万3750円~)や「はこシャツ」(1万5400円)、ストール(5500円~)などを販売しています。 ギャラリー店主は、尾畑さんの妻・林舞さん(40)。「使うほど味が出て原毛に近い肌触りになり、変化を楽しむリピーターもいます」と舞さんは言います。
メゾンはこしまは箱崎縞をPRしようと3年前にオープン。カフェスペースもある開放的な空間で、尾畑さんは「カフェで一休みしながら箱崎縞のことを知ってほしい」と話します。 提供するスイーツも手作り。箱崎の“箱”にちなんだ四角い「箱プリン」(600円)、縞柄をイメージしたバウムクーヘン「SHIMA」(1カット470円)が人気です。コーヒー好きの尾畑さんが自宅で焙煎(ばいせん)した一杯も楽しめます。
「戦前の人は、地域への思いを胸に箱崎縞をおこしました。この思いを引き継いでいきたい」と尾畑さん。「箱崎も再開発で様変わりします。懐かしく、すてきな織物を広く知ってもらい、地元のためになるお手伝いをしたい」
読売新聞