青森の夏といえば「ねぶた」と… 忘れちゃいけないアイスクリーム 十和田と弘前の「味」は
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手や東北の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。 【画像】十和田で愛される「十色アイス」と、弘前の味の「ジャンボアイス」とは
「ラッセラー」のかけ声とともに…
盛岡の「さんさ踊り」の取材が終わると、青森の「ねぶた祭り」へと転戦する。 暑くて「熱い」、青森の夏。 法被姿の人々の「ラッセラー」のかけ声と共に街が躍動し、荘厳なねぶたが観光客で埋め尽くされた通りを行き交う。
「花火みたい」と言われてうれしくて…
青森の夏でもう一つ、忘れてはいけないのが「アイスクリーム」だ。 出張の度についつい買い求めてしまうのが、青森県十和田市の「十色アイス」だ。 イチゴやメロン、パインなど、色とりどりの10種類のアイスを、コーンの上にバラのように盛りつける。 市役所前に止めたリヤカーの前にはいつも、大人や子どもたちの列ができている。 考案したのは畠山繁男さん(78)。この道40年。 「昔、花火大会で3色のアイスを売ったら、子どもたちから『花火みたいだ』と言われて。うれしくて数を増やしていったら、10色まで増えちゃった」 SNSで拡散し、いまでは県内外から客が来る。
どうしても食べたくなる「弘前の味」
青森県弘前市の藤田アイス店では、バナナ味のアイスが約800グラム(740ミリリットル)の袋にぎっしりと詰められた、名物「ジャンボアイス」が飛ぶように売れていく。 弘前城近くで同店がアイスの販売を始めたのは、1970年代後半。 当時、リンゴを保管する倉庫を経営しており、大型の冷凍庫を利用してできる商売がないかと考えた。 藤本レイ子社長(62)は「当時、南国産のバナナは高級感があり、北国の人にとっては憧れだったみたいです」と振り返る。 1日に250個ほど製造され、スーパーや産地直売所で販売している。 首都圏などで暮らす「弘前人」も多く、オンラインショップでも売れている。 店先で3袋買い求めた60代の女性は「夏が来ると、どうしても食べたくなる『弘前の味』。大手メーカーのアイスに負けずに、これからも作り続けてほしいです」とうれしそうに話す。 (2022年夏、2023年夏取材) <三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した>