TikTokで話題、65歳の『歌手志望弁護士ささせ』って何者? 10代で失明危機、司法試験16回挑戦の苦労人…直撃インタビュー
●「TikTokが伸びない弁護士」
弁護士がYouTubeやTikTokを始めても、伸びないケースがほとんどだ。 「『刑法で一番重い罪は外患誘致です』と弁護士的な小ネタを出しても、一般人からしたら雑学が1つ増えたに過ぎない。どうでもいい話ですよね。それよりは、好きなことに打ち込んでいる姿を見せる方が良い。これなら人に不快感を与えたり、人を傷つけることはありません」 「SNSの総フォロワー数が12万人いますが、仕事の依頼は1件もありません。依頼者には好評ですが弁護士としてのマーケティングとは切り離して考えています」
●父親から勘当「弁護士なんて卑しい人間、クズだ」
医療過誤事件や少年事件などを手がけ、指導をした司法試験受験生が軒並み合格するなど、目覚ましい実績が評価される笹瀬弁護士だが、道のりは紆余曲折だった。高2の冬に急性緑内障になり、医師から失明宣告を受けた。 「高校も行かなくなって、どうやって死のうかと考え、生活も無茶苦茶になっていました」 それから奇跡的に回復して大学生になったが、そこで司法試験の存在を知り、「いずれ就職してもまた目が見えなくなると失業する恐れもある」と資格をとることを考えた。 「父親から『弁護士は他人の紛争に首を突っ込んで金を取る卑しい職業だ。そんな人間のクズになりたいなら家から出ていけ』と言われ、大学を卒業してすぐ家を出ました」 転職と失業の極貧生活を経て、16回目で司法試験に合格した。 「弁護修習で、スナックのママが客に貸したお金を返してもらえないという相談を経験しました。スナックに行かないと起案できないと私は言ったのですが、指導担当の弁護士からは行かなくてもイメージできないとダメだと叱られたものです。 桜丘法律事務所の採用面接でその話をしたら、所長の櫻井光政弁護士も『それは絶対スナックに行ったほうがいいぞ』と意気投合しました」 のちの最高裁長官島田仁郎裁判官から任官をすすめられていたというが、櫻井弁護士、神山啓史弁護士のもとで弁護士人生を始めた。 独立後は、カウンセリングの手法を取り入れた法律相談「リーガルカウンセリング」をロースクールで教え、法テラスのスタッフ弁護士を養成する。また、小説「法廷弁護士」を執筆し、「リーガルカウンセリングの手法」を上梓するなど、活動は多岐にわたる。