ビリー・アイリッシュも被害 観客の投げたスマホが顔に直撃… コンサートで“物投げ”、なぜ多発?
「ファンサの王様」も被害に
今年最多の「物投げ」被害に見舞われたスターは、TikTokバズの王様でもある、アイドルグループ出身の歌手ハリー・スタイルズだ。若い女子が押し寄せる彼のライブでは、ファンがステージに投げたぬいぐるみをハリーが拾いあげるというファンサービスがもともと定番化していたという。このような楽しく安全なアイドル文化は、コロナ禍明けから崩壊の兆しが見えるようになった。 「神ファンサ」で知られるハリーは、ツアー初期になんらかの物体が股間に直撃したときも、痛みにあえぎながら「不運だったね」と慈悲深い反応を見せていた。しかし、その後の欧米公演でキャンディや薔薇が彼の目を直撃するという事態が続き、パフォーマンスを中断せざるをえなくなった。
コンサートチケットの高騰も一因か
上記の例では、アーティストに物を投げる行為は「嫌がらせになったとしても推しの反応がほしい」ファンの暴走に見えるが、一方でそうでない場合もあるようだ。有志ファンによる究明という域を出ないが、ハリーにお菓子を投げつけた客は、ファンではなかったからこそ、公演中に退屈になり「遊び」として歌手を狙い撃ちした可能性があるとも取り沙汰されている。 これが第二の仮説、ファンの観客比率が減ったからこそ、安全な空間が崩壊したという見立てだ。 近年のツアーでは、米国を中心に、航空券のようにその時々の需要にもとづいて値段が変動するダイナミックプライシング式のチケット販売が増えている。たとえば、ハリーの米大都市圏ライブのチケットは、いっとき最安300ドル(約4万円)ほどとなり、転売されたものにいたっては11,000ドル(約150万円)にまで上昇したと報告されている。 あまりの高騰により、行きたくても行けないファンのかわりに、軽い気持ちで大金を出せるお金持ちの非ファン層の観客が増えたことも原因の一つではないかと指摘されているのだ。
ビリー・アイリッシュは「6年前から投げられていた」
アーティストの被害は、主に夏の米国で多発していた。そのためコロナ禍明けのいっときの狂騒だった可能性もあるが、まだ安心はできない。11月にアルゼンチンでコンサートを行ったテイラー・スウィフトは常識的な注意喚起を行った。 「ステージに物を投げられると本当にびっくりする。それでダンサーが転ぶかもしれない。プレゼントをくれるのは嬉しいけど、ステージには投げないでほしい」 さらに、Z世代ファンを多く抱えるビリー・アイリッシュの場合、コロナ禍以前より物を投げられていたという。 「もう6年ほど、ステージ上で物を投げつけられてる。今、さも新しい現象かのように取り上げられているのが不思議」 アーティストが無防備であることが多い現行のコンサートの形態は、演者側と観客側の相互信頼で成り立っている。その信頼関係が崩れてしまえば、公演のかたちが一変する可能性がある。日本のコンサートマナーは比較的良いとされているが、マナーは守るに越したことはない。
辰巳JUNK