ビリー・アイリッシュも被害 観客の投げたスマホが顔に直撃… コンサートで“物投げ”、なぜ多発?
「これは……あなたのお母さん?」。 海外でバズった動画には、人気歌手ピンクが戸惑う姿が映っていた。イギリスでのコンサート中、ファンがステージ上のピンクに自分の母親の遺灰を投げつけたのだ。「どう反応すればいいかわからない」。 【画像】現在のパリス・ヒルトン(42)と、ハーバード卒の実業家の夫を見る なんとも非常識な話だが、危険がなかったぶん幸運だったかもしれない。
スマホ、飲料水…コンサートで「物投げ」被害が広がる
2023年は、洋楽スターが恐怖に包まれた年だった。コンサートで、観客が演者に物を投げる迷惑行為が急増したのだ。今夏、日本ではフェスでの痴漢が問題化したが、アメリカでは「物投げ」が警察沙汰に発展している。 6月、歌手ビービー・レクサのニューヨーク公演中、観客の男が勢いよく投げたスマートフォンが彼女の顔面に直撃、男は逮捕された。病院に搬送されたレクサは左目が紫色に腫れあがる怪我をした。 翌月には、ラスベガスの野外ライブ中に飲料水をかけられたラッパーのカーディ・Bが激怒し、マイクを投げ返した。しかしまったく別の客にあたってしまったようで、被害届を提出される事態にいたった(さいわい立件されず)。 「アメリカではショーのエチケットを忘れ去った人たちがステージに物を投げてるみたいだけど……私にそんなことするようなら殺すわよ」。 テイラー・スウィフトやレディー・ガガなど、幾多のスターたちの被害が報告された夏頃には、英国出身歌手アデルがジョークまじりに事前警告するほどの状況となっていた。
なぜ観客のマナーはここまで悪化したのか
もちろん、アメリカでも、このような危険行為は常識はずれのマナー違反。それゆえ、何故ここまで状況が悪化したのか、議論が白熱した。 第一の仮説は、コロナ禍を挟んでマナーが悪化したというもの。ロックダウンが解かれて以降、迷惑行為の急増はコンサートに限らず、病院やレストランでも報告されていた。映画館にしても同様のようで、劇場で打ち上げ花火を放ったり、乱闘したりしたティーンたちの逮捕劇の報道が続いている。 マナー悪化の要因には、パンデミック下で蓄積されたストレス、とくに若者のあいだで「青春を奪われた」という鬱屈した思いが強いこと、そして対面交流が激減したことにより「誰に何をやってもいい」というインターネット式コミュニケーションが浸透したことなどが挙げられている。 マナー忘却に、SNSバズ欲求が魔合体したことで、事態はより深刻になったのかもしれない。たとえば、前出のビービー・レクサにスマホを投げた男は「歌手に携帯電話を渡し、自撮りしてもらうTikTokトレンド」を再現するつもりだったと供述した。 実際、SNSには、ファンのスマホで写真を撮るスターの動画が出回っている。しかし、このファンサービスは、スマホの安全な受け渡しができる最前列客の特権だ。遠くから投げたら危ないことなど少し考えればわかるはずだが、今回の犯人はバズりたい一心でそのことに気づかなかったようだ。