映画「対外秘」イ・ウォンテ監督にインタビュー!悪役イ・ソンミンとはかなり親密?“家が近くて気が合う(笑)”
大迫力のアクションと怒涛の展開で大反響を得た「悪人伝」のイ・ウォンテ監督による最新作「対外秘」が、いよいよ日本に上陸! 謀略の渦巻く絶対予測不能サスペンスは、すでに世界中の映画ファンを魅了している。Kstyleでは、このたび「対外秘」のジャパンプレミアイベントで来日したイ・ウォンテ監督にインタビューを実施。撮影の裏話や俳優との意外な親交など、たっぷりと話を聞いた。 東京国際映画祭に感謝「一同本当に光栄に思っています」 ――韓国初登場1位を記録したほか、カナダ、イタリア、ハワイ、オーストラリア、イランなどの映画祭にも出品されました。その間、どんなお気持ちで過ごしていましたか? イ・ウォンテ:実は、この作品はコロナ禍が長引いたことで、なかなか公開日が決まりませんでした。その間にも海外の映画祭からいくつか声をかけて頂いたのですが、コロナ禍ということもあり、踏み切れませんでした。そのような経緯で、海外の映画祭としては今回の東京国際映画祭が初となります。新型コロナウイルスによってそもそも招待が制限されていた上に、数少ない招待にも応えることができなくて俳優たちとしても、ようやくこの作品を背負って映画祭に来られました。一同本当に光栄に思っております。ありがとうございます。 ――韓国だけでなく、世界各国で鑑賞した方々からの絶賛が相次いでいます。その要因はなんだと思いますか? イ・ウォンテ:私が耳にした感想で最も多かったのは「この映画はノンフィクションのようだ」「実話を基にした作品だと思った」というものです。特に、フランスでは配給会社の方から「私たちの国の事件をベースに作りましたか?」なんて声もありました。本当に、様々なシーンで特定の事件をベースにしているのでは、と尋ねられました。というのも、私はこの映画を作る時に「時代や国を越えて、人間の本性や権力の本質を描こう」と心掛けたのです。実際に、これらは数千年の歴史の中で繰り返されてきた争いの種ですよね。権力を巡って争ったり、騙しあったり、人間の良心が欲望を前にした時に崩れ去ったり昔の古典文学を目にしても必ず出てくる題材なので、それだけ多くの共感を得たのだと思います。私自身も、見る人々の共感を誘うような、普遍的な感情を抱くような作品にしたいと思っていましたし。権力の本質を人々に伝えたいという部分は、特に強調しています。 ――キャスティングには監督の希望が反映されていたのでしょうか? イ・ウォンテ:まず、主演の男性陣3人は演技が世界トップクラスだと思っています! 韓国でも皆さんトップクラスの人気を誇っていますし、まさに私の希望が反映されたキャスティングでした。一緒に作品を作っていく時間がとても幸せでしたし、監督としてとても光栄でした。俳優同士の調和も見事なもので、劇中で対立するシーンをはじめ、すべての工程が物凄く良かったんです。たとえこの作品が興行的にイマイチだったとしても、きっと素晴らしい映画になるだろうと思っていました。そして、実際に見ていただくとわかるのですが、3人の役柄もぴったり合っていますよね? 顔立ちもそうですし、本当にキャラクターとの調和が素晴らしいです。 ――キャスティングをする上で心掛けている、監督ならではのポイントはありますか? イ・ウォンテ:私は、キャスティングをする上で重要視していることが3つあります。まず1つめは、役柄に合っているかどうか。適役かどうかという部分ですね。キャラクターとのシンクロ率は常に念頭に置いています。2つめは、俳優同士のアンサンブルです。1人ひとりが素晴らしくても、組み合わせとして違和感があるとキャスティングに成功したとは言えませんよね。そして、3つめは新鮮さです。「この役はあの俳優が演じそうだな」という予想を裏切るような意外性がなければ、作品はつまらなくなってしまうと思っています。意外性を感じる部分は1人の俳優でなくても良いんです。組み合わせとして見た時に新鮮だなと思えるようにしても良いですし、とにかく見た人たちが俳優の新しい魅力を見つけられるようにと心掛けています。 イ・ソンミンと気が置けない仲に「地元が一緒で家も近い(笑)」 ――今作でのキャスティングにまつわるエピソードがあれば教えてください。 イ・ウォンテ:イ・ソンミンさんは今回初めて一緒にお仕事をさせていただいたのですが、彼をキャスティングして本当に良かったです。演技はまさに言うことなしでしたし、チョ・ジヌンさんとキム・ムヨルさんの間に立って両者を引っ張ってくれるような、強いパワーを持った人でした。彼は3人の中で最後にキャスティングしたのですが、いざ決まった時は本当に良い気分でした。この映画は上手くいくぞ、と思いましたね。そして、実は私とイ・ソンミンさんは同い年で同じ町内に住んでいるんです。家も本当に近くて、現場では演技に圧倒される場面がたくさんありましたが、今では良い友達でもあります(笑)。さらに、生まれ育った土地も同じなんですよね。なんだか感性が合うなと思う場面がたくさんあって、そういった点も満足のいく作品になった要因だと思います。 ――チョ・ジヌンさんが演じる弱小政治家・へウンが、物語が進むにつれて変わっていく姿も圧巻でした。 イ・ウォンテ:今回チョ・ジヌンさんが演じたヘウンは、ごく普通の平凡で真面目な人間が悪人になっていくというキャラクターです。この人物は、堕落するにつれて地位を得ていきますよね。良心を捨てて、信頼を捨てて、人間的に堕ちていく一方で、地位や権力といった社会的地位は上がっていくすごく矛盾しているものの、これが現実だということを突き付けてくるようなキャラクターなのです。チョ・ジヌンさんは骨太な演技が強みの俳優ですが、それと同時に細かいディテールを見事に表現する人でもあります。今回のように矛盾した人物を演じる上では、彼の演技が不可欠だったと言えます。外見的にも骨太な印象があるので、そのような人物がどんどん崩壊していく姿も、見る人に強い印象を与えられるのではないでしょうか。 衝撃の劇中ワード納品の誕生秘話「殺しを文学的に」 ――劇中で印象的だった「納品」という言葉は、どのように生まれたのでしょうか? イ・ウォンテ:「納品」はご存じの通り、劇中で「殺人をすべて終えました」という意味で使っていますが、これは殺人が完了している感じを強烈な一言で表現したいと思ったんです。ただ「殺しました」と言っても、面白くないし文学的じゃないですよね。あまりにも直接的だと何かしら引っかかる部分もあるでしょうしそういった懸念をすべて緩和させるような単語をずっと考えていました。「清掃しました」とかも思い浮かびましたが、よりしっくり来るのは「納品」だなと思って決めました。「殺しは彼らにとってビジネスに過ぎないのだな」という感じを上手く出せた気がします。 ――前回の「悪人伝」に続き、ハードなアクションや残酷なシーンは思わず目をそらしてしまうような迫力があります。あれだけのシーンを練るとなると、精神的にも負担がかかりそうですが。 イ・ウォンテ:シナリオを書く時に、残酷なシーンやハードなシーンは当然想像しながら書くわけです。私は元々善良な人間ですしね(笑)。以前撮った「悪人伝」という映画もハードなアクションが展開される作品でしたが、必要な作業とはいえ残酷なシーンを想像するのは結構辛いものです。シナリオを執筆中に出かけて、街中で気に食わない人がいたりすると「こいつをどのように殴ってやろうかな」とつい考えてしまうとか、そのぐらい追い込まれる作業ではありますね。もちろん、楽しさもあるのですが、アクションというものはとにかく消費されやすいジャンルで、どのように構成を練っても同じように見えてしまいがちです。そのような中で、いかにして差別化を図るかという部分は常に気にしています。 ――監督のこだわりが反映されて、あれだけの迫力になっているのですね。 イ・ウォンテ:加えて、韓国には素晴らしいアクション監督がたくさんいらっしゃるんです。シナリオが完成したらアクション監督と一緒に細かい部分を詰めていくのですが、実際に出来上がったシーンを目にしていただくと独特な質感がわかると思います。劇場を訪れる皆さんには、ぜひ唯一無二のアクションを体感していただきたいですね! ■作品概要 映画「対外秘」 11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国公開 【出演】 チョ・ジヌン「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」「警官の血」 イ・ソンミン「KCIA 南山の部長たち」「復讐の記憶」 キム・ムヨル「悪人伝」「犯罪都市 PUNISHMENT」 【監督】 イ・ウォンテ「悪人伝」 2023 / 韓国 / 韓国語 / 116分 / カラー / スコープ / 原題:대외비(英題:THE DEVIL'S DEAL) / 5.1ch / 字幕翻訳:鷹野文子 / 映倫区分:G (C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED. <あらすじ> 1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウンは、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテが、公認候補を自分の言いなりになる男に変える。激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した極秘文書を手に入れ、チームを組んだギャングのピルドから選挙資金を得て無所属で出馬する。地元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛ける。だが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかった。
Kstyle編集部