最終回目前!95年生まれの筆者が考えるテレ東60周年ドラマ『95』はなぜ今ドラマ化されたのか?
当時と現代の若者たちの共感を生む
興味深いのは、原作者である早見和真氏がインタビューで「本作の熱烈なファンは95年前後に生まれた人が多い」と答えていることだ。「こんな時代があったんですか」と問われる事が多いという。たしかに29年前の1995年は今から考えると過去の時代であり、今と比較すると社会が正しいとする価値観や経済状況、国際関係、環境問題、テクノロジーに至るまで何もかもが異なっている。ドラマを通してその違いに関心を寄せる若者も多いのかもしれない。 違いのなかに見出す憧れや羨望もあるだろう。翔やQを中心としたグループのほか派閥ごとの強固な関係や、グループの中心にいることで時代のスターになれるかのような表裏一体の充実感と閉塞感、血なまぐさい暴力的な熱さと危険な香り。 熱さこそ正義な時代の雰囲気をキャストのパワーやアクションシーンを交えて楽しませながら、暴力や偏った権力に飲み込まれた負の側面も描いていることが、形を変えて現代の視聴者の共感を生むのかもしれない。 一方で核となるメッセージは至ってシンプルだ。「あれから僕たちは、カッコいい大人になれただろうか」。時代を超える普遍的な問いの答えを、今まさに探している人も多いだろう。Qたちのようにまだ大人ではない若者にとっても「カッコいい大人になる」と強く決心する場面に直面することもあるはずだ。 『ごくせん』や『GTO』、『HiGH&LOW』といったいわゆる不良やヤンキーを扱い、派閥による闘いや熱血教師によって改心していく学園ドラマは過去にも多数あるが、ここまで年代や時代背景を特定して、その時代の雰囲気を追い求めた作品は少ない。約30年という時を超えて、ストレートなメッセージが今の大人たちや若者にも刺さっているに違いない。最終回は6月10日(月)夜11時06分から放送される。
藤枝 あおい