デジタル工作機械にペンを握らせて描く「線」。デザイナー深地宏昌が独自の手法で生む小宇宙
普段見過ごしてしまうような小さな範囲に詰まった想いや技術を紹介する、CINRAのshort動画連載「ミクロに宿る宇宙」。vol.2からは、その背景を記事でもご紹介します。 【画像】展示会場にてドローイングを行うプロッター vol.2でクローズアップするのは、デザイナーの深地宏昌が「Plotter Drawing(プロッタードローイング)」という手法を使って生み出す作品。機械を使って描かれる作品ですが、筆材や支持体、筆圧、湿度など制御できない偶然性も内包しています。深地へのインタビューを通して、その背景に迫ります。
Plotter Drawingとは? 秩序と偶発の邂逅が生み出すもの
ぐるぐると規則的に円を描く、柔らかい筆致。放射状の直線的な図面をなぞった、鋭さを感じる筆致。かと思えば、強く押し付けたインクが紙にじむような、手仕事を感じる筆致――。近づいて見たり、遠くから見たり。Plotter Drawingの軌跡を目で追っていると、不思議と時間を忘れて、静謐な空間に吸い込まれたような感覚になる。 東京・南青山のOtherwise Galleryで6月14日から開かれている『Road of Lines“線の足跡”』。深地と、プログラマーの堀川淳一郎によるクリエイティブスタジオ DIGRAPHによる展覧会だ。会場の中心には、プロッターが機械音を響かせながら、せっせと線を描いている。 カッティングプロッターは、シート状の素材を指定した形状に切り分けることができるデジタル工作機械だ。本来の用途であればカッターがあるところに、Plotter Drawingでは筆やペン、鉛筆などを握らせる。描画のデジタルデータを送ると、その図面通り緻密に描かれるが、何で描くか、何に描くかによって大きく表情が異なる。さらにドローイングのスピード、筆圧、気温や湿度も影響するという。その偶然性と、コンピュータ制御によるデジタルの正確性が同居している。 深地が初めてPlotter Drawingの作品を発表したのは2015年。大学院の修了制作として向かった作品だった。