『ピアニストを待ちながら』井之脇海 村上春樹ライブラリーに漂っていたもの【Actor’s Interview Vol.44】
カット割りの意図を汲んでしまう
Q:実際にこの場所で撮影されたそうですが、どのくらいの時間がかかったのでしょうか。 井之脇:2週間くらいかかりました。リハもたくさんあったので、61分の映画にしてはかなり時間を掛けたと思います。 Q:撮影は順撮りだったのでしょうか。 井之脇:基本は順撮りでしたが、七里さんはこだわるので、撮った3日後ぐらいに「もう1回撮り直してもいいですか?」と始まるんです。そういう意味では順撮りではないかもしれません。また、OKシーンも、別のシーンを撮り直したことによって再度撮り直すことになる。一個ずつピースを組み立てながら、気になる点は都度解消しながらやっている感じがありました。コロナ禍で、この場所がずっと貸し切りだったからこそ出来たのだと思います。その点では驚くほど贅沢な撮影でしたね。 Q:演劇的だったという意味では、撮影でもカットを割らず長回しだったのでしょうか。 井之脇:カット割は決まっていて、アングルを切った上で、シーンの最初から最後まで一通りやる感じでした。後半の長いシーンはブロックごとに分けましたが、それでもかなり長くカメラを回していました。まさにデジタルの特権ですね。フィルムだと破産しちゃうなと(笑)。 Q:自身が監督も経験されている井之脇さんは、監督としての視点で演出を見ることはありますか 井之脇:現場にいるときはなるべく役者に徹したいのですが、良くも悪くもカット割りの意図を汲もうとしてしまいます。もちろん考えてしまうからには、それを生かした上で演じたいと思いますが、さすがにカットの使いどころまでは考えないようにしないとなと。それでも、相手のリアクションが欲しい画では、強く印象づけるアクションをこちらから起こしてあげた方が、カットの切り返し的にいいかな…など、ついつい考えてしまいますね。今回の現場では、かなり長いことカメラを回していたので、上がりを見ると想像とは大分違っていました。まさかジャンプカットが使われているとは思わなかったですし、見ていて面白かったですね。
【関連記事】
- 『若き見知らぬ者たち』内山拓也監督×磯村勇斗 “主人公の交代劇”への挑戦【Director’s Interview Vol.441】
- 『HAPPYEND』空音央監督 ノスタルジーを持って都市を切り取る【Director’s Interview Vol.440】
- 『満月、世界』塚⽥万理奈監督 演技未経験の子供が本人役を演じる意義とは【Director’s Interview Vol.435】
- 『ぼくが生きてる、ふたつの世界』呉美保監督 自分とリンクした、出会いがもたらす心の変化【Director’s Interview Vol.432】
- 『ナミビアの砂漠』山中瑶子監督×河合優実 運命的に出会った二人が生み出したもの【Director’s Interview Vol.429】