【世界の映画館めぐり】小豆島・二十四の瞳映画村 美しくノスタルジックな日本の風景に浸り、映画史に残る名作をいつでも鑑賞できる
映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回は香川県、小豆島の二十四の瞳映画村内にあるギャラリー松竹座をご紹介します。 【フォトギャラリー】美しくノスタルジックな風景と名作映画が楽しめる!二十四の二十四の瞳映画村、その他の写真 今年は高峰秀子さんの生誕100年を記念し出演作の上映や展覧会などを開催する「高峰秀子生誕100年プロジェクト」が実施されました。高峰さんの代表作の一つで、日本映画史に残る名作といっても過言ではない木下惠介監督の「二十四の瞳(1954)」は今年、公開70周年。島の学校に赴任した新人女性教師と12人の生徒の心温まる交流、そして、誰もが否応なしに戦争に巻き込まれた時代とその後を描いた人間ドラマです。 原作小説を書いた作家の壺井栄氏が小豆島出身ということから、映画は主に小豆島で撮影されました。モノクロームのクラシック映画ということで、現代の若い世代は敬遠してしまうかもしれませんが、そんな心配は全くありません。高峰さんが演じる新米教師の大石先生、小学生の子どもたちと、登場人物も若者が多く、みな等身大の喜びや悩みを抱える存在として描かれ、あっという間に感情移入できるはずです。戦争が引き起こす悲劇も題材としているため悲しいシーンはありますが、子どもが見ても理解できるような優しく穏やかな語り口で、一度見たら生涯心に残り続ける、小さな宝物のような傑作です。 二十四の瞳映画村は、1987年に田中裕子さん主演でリメイクされた同名映画の撮影セットを生かした、日本映画・文学のテーマパークとしてオープンしました。映画に出てくる木造校舎「岬の分教場」をはじめ、昭和初期の街並みが再現されており、敷地内を自由に歩き、校舎内の机や椅子に座ってみることも可能です。当時を知らなくともなんだか懐かしい気分に浸れますし、窓の外の美しい瀬戸内海を眺めているとあっという間に時を忘れてしまいます。 そして、映画ファンにおススメしたいのが「ギャラリー松竹座」と名付けられた敷地内の施設です。なんと、営業日は毎日1日3回「二十四の瞳」(1954)が上映されており、映画村の入場料のみで、鑑賞は無料。映画が撮影された土地でその映画をスクリーンで鑑賞する、というここに来なければできない特別な体験を味わえるのです。(※不定期で別作品の特別企画上映もあり) 筆者が小豆島を訪問したのは昨年の9月上旬、まだ夏の日差しが降り注ぐ暑い日でした。「日本の地中海」とも呼ばれるように、温暖な気候でオリーブ栽培も盛んな小豆島には「オリーブ公園」という風光明媚なスポットがあります。ここは実写映画版「魔女の宅急便」(2014)のロケ地にもなったそうで、キキのほうきにまたがって写真が撮れます。二十四の瞳映画村は、3月~11月の間、このオリーブ公園ほど近くの桟橋から渡し舟で行くことができます。 映画「二十四の瞳」にも、大石先生や子どもたちが舟に乗る場面が出てくるので、映画を観た方はもちろん、二十四の瞳映画村で初めて「二十四の瞳」を観ようと思っている方は是非とも舟での移動をお勧めします。目の前に広がる美しい島の景色、ほほを撫でる海風、穏やかに進む小舟は旅情をかき立てます。ボサノバの名曲「小舟(O Barquinho)」を脳内で再生し、バカンス気分に浸りながらしばらくこのまま乗っていたいなあ……と思うも10分あまりで到着しました。船酔いするタイプの方も怖がらずにチャレンジできると思います。 映画のセットや壺井栄文学館など、映画村内には見どころがたくさんありすぎるのでここでは割愛しますが、映画が上映されるギャラリー松竹座は昭和30年代の映画館が再現されており、タイルやステンドグラス、照明器具のレトロな雰囲気が素敵です。日本映画界に輝く往年のスター、現在もご活躍の監督陣や俳優さんの写真も飾られ、昭和の日本映画の知識が深まります。2階は高峰秀子さんに関する写真や貴重な愛用品が展示されたギャラリー併設のブックカフェ「書肆海風堂」があり、映画や旅の本を読みながら美味しいコーヒーが楽しめます。 映画の上映は1階のホールで行われます。筆者が訪問したのが平日の昼だったので館内は空いており、私のほかに、英語で会話をしている観光客と思われる方々が数名鑑賞していました。上映は、英語と中国語の字幕付き。あらためて気づきましたが「二十四の瞳」って、音楽映画でもあるんでよすね。「ふるさと」「仰げば尊し」など日本で生まれ育った方なら、一度は耳にしたことがある日本の唱歌の名曲が作品世界を彩ります。筆者は修学旅行の船上で女学生が、♪寄する波も、貝の色も~♪と「浜辺の歌」を歌い上げるシーンがお気に入りです。抒情的で素敵な歌を作った昔の人をしのばずにはいられません。 “涙の感動作”というコピーが付くような映画は普段あまり見ない筆者も、「二十四の瞳(1954)」は、平凡でも平和で穏やかな暮らしを望む日本人誰もが必見の映画だと、声を大にして推したいです。そして、ここでモノクロの映画を観た後に、小豆島のリアルな風景の中に身を置く体験は格別でした。近年では「八日目の蝉」(2011)、今年公開された「からかい上手の高木さん」など小豆島を舞台とした映画はいくつもあるので、小豆島、そして二十四の瞳映画村は、旅行先の候補のひとつとして、映画ファンに是非おすすめしたいスポットです。 ▼ 二十四の瞳映画村 営業時間など詳細公式HPはこちら(https://www.24hitomi.or.jp/)