「株高でも景気は最悪」「GDPは2位→38位に急落」残酷な事実を直視できない衰退国家ニッポンの末路
■一人当たりのGDPは2位→38位に落ちた 株価が上がり、設備投資が増加した。さらには春闘で賃上げ率5.1%を獲得した……。メディアが報じる情報に日々接する人は、景気が上向いていると感じるかもしれません。 しかしメディアは、政府や経団連に忖度(そんたく)して、明るい話題を強調して報じます。その象徴が賃上げです。日本のメディアはたった5.1%の賃上げを大喜びで報じました。しかしアメリカの自動車産業が勝ち取ったのは、4年半で約25%の賃上げです。 日本のメディアは、短期的な数字の推移や、その瞬間のデータだけを切り取って、景気が上がった、下がったと一喜一憂しがちです。そんななか、客観的に景気を判断するにはどうすればいいのでしょうか。大切な視点は2つ。それが、長期的な視点とグローバルな視点です。 国全体の経済活動状況をあらわすGDP(国内総生産)をその国の人口で割った「1人当たりGDP」は、国民の豊かさや生活水準の目安になります。2000年の時点で、日本は1人当たりGDPで世界第2位の地位にいました。しかし24年後の今年、韓国と台湾にも抜かされて、世界38位に落ちました。 平均年収という観点で世界と比べると、約590万円の日本に対し、アメリカは約7万7000ドル――日本円で約1080万円。平均年収はアメリカ人の半分程度まで下がってしまった。 そんな現状で、株価が多少上がったり、5.1%賃上げしたりしたとしても、先進国の最底辺という現実が変わるわけではありません。 今年の2月に日経平均株価が1989年の史上最高値を更新したとメディアが大騒ぎしましたが、34年かかって一時的にバブル期を超えただけにすぎません。私には、世界38位に転落したのに、いまだに経済大国だった過去の栄光にしがみつき、貧困や格差という現実から目をそらしているだけに見えました。 それは、日本人が主観的な気分で風景を見てばかりで、客観的に物事を考えようとしていない証左です。 経済や景気の良し悪しについて考えるのならば、まずはバブル崩壊以降の失われた30年で日本の競争力は著しく低下したという前提に立ち、一つ一つの事象やデータを判断していく必要があるのです。