澤を生かすための新布陣はW杯で機能するか
4年前に世界を制した歴戦の女王たちに混じって、四国のファンにはあまり馴染みのない選手がカクテル光線に照らされている。 ニュージーランド女子代表を迎え、24日夜に香川県立丸亀競技場でキックオフされた国際親善試合。W杯カナダ大会のグループリーグ初戦で対戦するスイス女子代表(日本時間6月9日)を想定し、現時点でベストメンバーを送り出すと明言していた佐々木則夫監督は、10人のフィールドプレーヤーのなかに代表14試合目の川村優理(ベガルタ仙台レディース)を抜擢した。 生まれ故郷のチーム・アルビレックス新潟レディースからジェフ千葉レディースを経て、2014年シーズンからベガルタでプレーする26歳。登録はDFだが、指揮官に命じられたポジションはボランチ。約1年ぶりに代表復帰を果たし、先発にも復帰させた澤穂希(INAC神戸レオネッサ)とコンビを組んだ。 センターバックが主戦場だった代表で、ボランチとしてプレーするのは初めてとなる。 「チームでもやっているのでそれほど戸惑いはなかったですけど……ただ、チームでやっているボランチと代表のボランチは役割が全然違うので」 18日から香川県内で開始されたW杯へ向けた合宿。佐々木監督は男子大学生を相手にした実戦形式の練習でスライディングタックルを繰り返し、球際の激しさでも負けていない澤の心身のコンディションのよさを再確認。「背中で語れる選手」として必要不可欠と判断し、ボランチを組むコンビを模索してきた。 4年前もコンビを組んだ阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)、左足からの正確なフィードを武器とする宇津木瑠美(モンペリエ)、そしてセンターバックもできる田中明日菜(INAC神戸レオネッサ)。W杯制覇を経験した選手がそろい、実際に合宿では宇津木が澤と組むことが多かったなかで、川村に白羽の矢を立てた理由を佐々木監督はこう語る。 「非常に守備の能力が高いですし、その意味では今日のゲームは宇津木よりも川村のほうがいいんじゃないかと。実際、守備における積極性という部分ではよかったですね。攻撃の部分ではちょっと流れをつかんでいなかっただけで、もっとできると思います」 試合が始まり、日本がボールを保持する展開になると、それまでは横関係だったダブルボランチが頻繁に縦関係へと変化した。相手ゴールに近いポジションを取るのは澤だった。 「やはり澤さんにはもっと前で、もっと攻撃に絡んでほしかったので」 縦関係となる意図を説明した川村だが、宇津木との交代でベンチに下がるまでの67分間のプレーには決して満足していない。状況によっては川村が前に行くほうがスムーズだった場面もあったが、そこで澤と意思の疎通を欠くことが多かったからだ。 「どちらが行くの、という感じでお見合いしてした場面もあったので。ただ、私としてはもっと守備の部分で澤さんの負担を減らしてあげられればよかったと思っています」 まだ試運転の域を脱しないが、ニュージーランド戦で産声をあげたばかりの「澤‐川村」コンビは、なでしこジャパンに新しい息吹を与えている。