養老先生の「本棚」をのぞいてみると意外な書名が
「本棚を見るとその人の性格が見える」とはよく言われる。確かにラインナップや並べ方などの要素からプロファイリングが出来そうだ。では、バラエティに富んだこの本棚からはどんな人柄が見えてくるのだろうか。 ご紹介するのは『バカの壁』などで知られる解剖学者、養老孟司さんの「本棚」。 同書がミリオンセラーとなり、ベストセラー街道を突き進んでいた2004年末から2005年半ばにかけて、東京・池袋のジュンク堂本店の一角に「養老孟司書店」がオープンした。要は養老さんが選んだ本を並べたコーナーなのだが、そのために選んだ「オススメ本」は500冊以上。 当時作成された養老さんの「オールタイムベスト」とも言うべきブックリストをもとに、その棚をご紹介しよう。といっても、とてもそのすべてはご紹介できないので、ここでは代表作含め複数(3冊以上)の著作が紹介されている作家、書き手の顔ぶれを見ていくこととする。また、昆虫はじめ生物学関連のものはあまり意外性がないので割愛させていただく。
『めぞん一刻』に衝撃を受けた
まず「ミステリー小説(含むSF)」。クリスティやチェスタートンなどの作品も挙げられているが、複数の作品が挙げられているのは、『クリスマスのフロスト』(R・D・ウィングフィールド)に始まる「フロスト警部シリーズ」。さらに、アンドリュー・ヴァクスやジェームズ・エルロイなど、どちらかというと物騒な作品が多い作家がお気に入りのようだ。他にこのジャンルからはスティーヴン・キング、ネルソン・デミル、フレデリック・ブラウン。 「国内小説」に目を向けると、ミステリーは減り、藤沢周平、隆慶一郎作品がずらりと並ぶ。他に主な著作が数多く並べられている作家は、アン・タイラー、ミヒャエル・エンデ、内田百閒。 科学、人文系ではロナルド・D・レイン、ヴィクトール・フランクル、カント、ショーペンハウアー、阿部謹也、岸田秀、丸山真男、三木成夫、宮本常一らの名前が並ぶ。 さらに「マンガ」では手塚治虫と高橋留美子作品が特にお気に入りとのこと。高橋作品の中では『めぞん一刻』には衝撃を受けたという。当時、担当編集者が希望する対談相手を聞いたところ、真っ先にあがったのが高橋氏の名前だった。 あまりにバラエティに富んでいるのでここから性格を読み解くのはかなり困難だろう。あえて言えば、小説では恋愛モノなど、人間関係を扱ったものが極端に少ないのが特徴的と言えそうだ。それでも結論としては、「本が大好きな人」というごく当たり前のところに落ち着くのかもしれない。