「特別な1本」大谷翔平が松井秀喜超え 日本人最多176号も通過点「もっともっと何百本と打てるように」
◆米大リーグ ドジャース10―0メッツ(21日・米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム) ドジャース・大谷翔平投手(29)が21日(日本時間22日)、日本選手歴代単独トップのメジャー通算176本塁打を放った。本拠地メッツ戦に「2番・DH」でスタメン出場。3回1死一塁から8試合、38打席ぶりに右中間への先制2ランを運び、松井秀喜(ヤンキースなど)を超えた。憧れの存在を上回る一発で名実ともに日本最強打者となり「特別な1本」と実感を込めた。 破裂音の直後、ドジャースタジアムが大歓声に包まれた。大谷は確信歩きを6歩。右翼手は守備位置を一歩も動かず、手を後ろに組み、笑うしかなかった。0―0の3回1死一塁。ハウザーの81・7マイル(約131キロ)スライダーを振り抜いた。右中間席中段への打球速度110マイル(約177キロ)、飛距離423フィート(約129メートル)の一発は、8試合、38打席ぶりの5号先制2ラン。メジャー通算176本塁打とし、日本選手単独トップに立った。 「個人的には『特別な1本』でした。早く打ちたいと思っていたので、安心と喜びがあります」 憧れの松井秀喜を超え、言葉に実感がこもった。ドジャース移籍後、本拠地3発目。常々、次の打席、次の本塁打に集中する男が試合後、球団SNSを通じて高揚感を隠さず言った。 「まだ数本しか打ったことがないので、もっともっと、何十本、何百本と打てるように頑張りたい」 5回には投手強襲の内野安打を放ち、3戦ぶりマルチ安打。7戦連続安打、20試合連続出塁と勢いは止まらず、打率3割6分8厘、35安打で2冠に立った。 日本人打者に長打力は望めない―。かつてのメジャーでの見方を、松井が覆し、大谷が無にした。「長打を持ち味にして打っていくスタイルっていうのは、サイズがないと難しいこと」。左中間から左、逆方向へのアーチは松井の10本に対し、大谷は44本。これまで多くの日本人が阻まれてきた壁を豪快に越えてきた。193センチ、95キロ。恵まれた体格に努力を重ね、屈強な肉体を駆使して昨季は44発でアジア出身初の本塁打王。日本人でも「アーチスト」として戦えることを証明し、子供たちに夢を与えてきた。 「バッティング自体は可能性を広げていく作業だと思っている。可能性を広げる中でホームランがあるか、ないかは相手側の重圧も違いますし、来るボール自体にも多少影響するので。そういう意味では(長打は)自分の長所でもあるので、大事にはしていきたいなと思ってます」 12日(同13日)のパドレス戦で初回に通算175号を放ってから、本拠で足踏みが続いた。名物のオルガン演奏では時に「ゴジラ」のテーマ曲が流れるなど、周囲の期待も高まっていた。「初めからというわけではなかったですけど、最近になって、どのぐらい松井さんが打ってたか知ってからは目標にしてました」と言って見せた安堵(あんど)の笑みに、偽らざる本音がにじみ出た。 チームは大勝で連敗は3でストップ。何よりも勝利に飢える大谷は、約7分間の取材を、らしい言葉で締めた。「早いところ切り替えて、次に臨みたいと思います」。“松井超え”も通過点。伝説はまだまだ続く。(中村 晃大) ◆翔平に聞く ―日本人最多の176号。 「素直にうれしいですし、ちょっと前回のホームランからかかってはいるので、早く打ちたいなとは思いつつ。今日打てたので、まず安心と喜びがあります」 ―次の目標は松井氏のようなポストシーズンでの活躍になるのか。 「その前に、監督の記録を抜きたいなと思います(笑い)」 ―今後、後輩に追いかけられるような記録に。 「個人的にはもっともっとたくさん打つつもりではいるので、全部が終わった後に考えればいいことかなと思います」 ―ボールは自分で持っておきたい? 「どうなんですかね。この間もいただけるという話だったのでもらったんですけど、ちょっと食い違いがあったというのがあって。今回はちょっと分からないですけど、話を聞いてみてかなと思います」 ―小さい頃の松井氏のイメージは? 09年のワールドシリーズをどこで見ていた? 「ワールドシリーズをリアルタイムで見てたかどうか、ちょっと記憶にはないですけど。もちろん、ピンストライプのユニホーム。巨人よりもヤンキースのイメージの方が強いので。そっちのイメージがメインかな」
報知新聞社