田原総一朗氏が注目する「岸田首相の6月の決断」
自民党は4月の衆院3補欠選挙で2つの不戦敗を含めすべての小選挙区で敗北した。この結果はもちろん、自民党派閥による裏金問題の影響が大きい。自民党が5月17日国会に提出した政治資金規正法の改正案は、野党が求める内容とは開きが大きく、反発を買っている。 僕の見るところ、こうした中でも岸田文雄首相は6月の衆院解散・総選挙を望んでいるようだ。これには大きく2つ理由がある。 1つは、大手メディアの調査で岸田政権の支持率が少しだが回復したことだ。これは4~5月に積極的に外交に動いたことが影響しているだろう。日本の首相としては9年ぶりとなる国賓待遇で訪米すると、バイデン米大統領と会談。米議会の上下両院合同会議での演説では日米の結束を呼びかけた。全般的には米国のペースが目立ち、バイデン氏にとっては11月の大統領選に向けて国際的な同盟関係がうまくいっていることをアピールといったところだろうが、岸田氏はフランスでマクロン大統領、ブラジルでルラ大統領、パラグアイでペニャ大統領とも会談。一連の外遊の後、支持率はやや上昇した。 もう1つは仮に解散して総選挙で負けたとしても、党内からの圧力が高まった末に辞任するより傷の浅い負け方ですむと踏んでいるからだ。やや上昇したとはいえ岸田内閣の支持率は依然として低いが、野党の支持率が一向に上がらないことを考えると、あり得る想定だ。 岸田氏が6月に衆院解散・総選挙をするかどうかについて、僕は今のところ五分五分だと見ているが、解散しない場合には7月頃に内閣を大改造するのではないかという見方が出ている。そうなった場合の人事についてもいろいろな話が飛び交っており、上川陽子氏、石破茂氏、小泉進次郎氏らの処遇が注目される。
結束できない野党
与党の公明党は自民党と離れるつもりはまったくない。むしろ、自民党に厳しい注文をつけることで、連立を強化しようとしているようだ。 野党は対立することが多く、なかなかまとまらない。僕の印象では特に立憲民主党と日本維新の会は歩み寄りがなく関係が険悪になっている。日本維新の会は、野党第1党の座を立憲民主党から奪取しようとしているように見える一方で、与党として公明党に取って代わりたいのではないかと指摘する政治評論家もいる。野党間の足並みの乱れも、野党の支持率が伸びない背景にはあるだろう。
田原 総一朗