発達障害の人が仕事で「しくじる」のにはワケがある…本人も周囲も困らせる「5大特性」
近年、社会問題となっている「発達障害」。あなたの職場にもいるかもしれない当事者は、どんな困りごとを抱えているのだろうか。『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』の著者で、自身も発達障害で苦しんだ経験を持つ小鳥遊(たかなし)氏が、ADHD(注意欠如・多動症)の人に典型的に見られる「5つの特性」を解説する。 【図表を一気に見る】発達障害の人がやりがちなミスを〈紙1枚〉で防ぐ「すごい方法」
ADHDの人によくある「5つの特性」
発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)、そして私が診断されたADHD(注意欠如・多動症)の3つの要素があります。 人とコミュニケーションを取るのが苦手(ASDの人が抱える悩み)、文字を読んだり書いたりするのが苦手(LDの人が抱える悩み)など、ひと口に発達障害といってもその特性はさまざまですし、そこから生じる苦手なこと、辛いことも人によって異なります。 私の主な発達特性は、「抜け漏れ」「先送り」「過度な自責傾向」「段取りが苦手」「集中しづらさ」の5つで、これらはADHDでもよくある特性と言われています。 (1) 抜け漏れ 「抜け漏れ」は、私の特性の中で一番厄介なものでした。上司から「これやっといて」と言われても、自分のパソコンに向き直ったときにはもう忘れているなんてこともしばしば。 あるいは、「よし、これで終わった」と思って、成果物を上司に提出すると、「あれ、○○の資料も入れといてって言ったよね?」「あれ、この件について、△△さんに確認してほしいってお願いしたの覚えてる?」などと次々指摘が入り、結局、決められた締切内に仕事が終わらない、といったことがよくありました。 (2) 先送り 「先送り」は、自分でもびっくりするほどの大惨事を引き起こします。某ハウスメーカーに勤めていたとき、地方自治体からアンケートが届き、私が記入・返送をする担当になりました。けれども、封を開けてみると、やたらと記入事項が多く、「なにこれ面倒くさすぎ……今は無理だ」と、どんどん先送りにしていきました。 自治体から何度か催促の電話があったものの、「もう少し時間をください」となんとなく答えてやり過ごし、アンケートをデスクの引き出しにしまったまま、私は5日間の休暇を取ることにしました。 ところが、休暇の初日、上司から携帯電話に連絡があり、「あのアンケートはどうなっているんだ!」と大激怒されることになったのです。せっかくの休暇をのんびり過ごそうと思っていたのに、残りの4日間はまるで生きた心地がしませんでした。 先送りは長期にわたって負の威力が蓄積される分、最終的なダメージが大きいのが特徴です。 (3) 過度な自責傾向 「過度な自責傾向」は、「すべて自分に責任がある」と考えてしまう傾向のことです。よく「自責思考を持て」と言う会社や偉い人がいたりするので、必ずしも悪いこととは捉えられていないようです。 ただ、私はこれが原因で必要以上に自分を責めてしまったり、どこからどこまでが自分の責任かわからないという私の傾向も相まって、自分のせいではないミスにまで負い目を感じてしまったりすることもしばしばでした。 (4) 段取りが苦手 「段取りが苦手」とは、あるタスクの最終的な締切は把握しているのに、それを守るために「何を」「いつまでに」進めればいいかわからず、うかうかしている間に締切を過ぎてしまうようなイメージです。 たとえば、営業部の名称が変わり、私がその新しい名刺作成を頼まれたときのこと。私は次の2つの点がわからなかったせいで段取りに失敗しました。 ・名刺を完成させるには、新しい部署の英語表記を海外事業部の人に考えてもらわなければならないこと ・海外事業部の人は非常に忙しく、すぐには教えてもらえない可能性があること まだタスク管理を始めていなかった私は、名刺作成を締切内に終わらせるためには、「何を」「いつまでに」進めればいいのかわからないまま見切り発車で仕事を進めてしまい、海外事業部の人に英語表記を聞かなければと考えたときには、時すでに遅し。 結果として名刺は締切に間に合わず、営業部の人に大迷惑をかける事態となったのです。 (5) 集中しづらさ 「集中しづらさ」というのは、私の場合、集中力が「切れやすい」というよりも「ほかに気がいってしまう」というイメージです。 たとえば、作業中にふと「そういえばあのメールの件、まだ返事もらってなかったな」などと思い出してしまうと、メールの件が気になって、今までやっていた作業が手につかなくなってしまうのです。 ほかにも会社の同僚から声をかけられたり、デスクの上の資料に目がいってしまったりと、さまざまな原因で集中力がほかへいってしまいます。 ただ、前の4つの特性と比べると、仕事への影響はそこまで大きくありませんでした。何か重大なミスにつながるというよりは、仕事の効率が下がってしまう一因という感じです。