地域医療を守る~かかりつけ医の役割~
日本医師会総合政策研究機構がまとめた「日本の医療に関する意識調査2022年臨時中間調査」結果によると、国民がかかりつけ医に期待する役割や機能として挙げた第1位(66.6%)は「どんな病気でもまずは診療できる」でした。患者の意識の中では、薬を出してくれるだけの医師はかかりつけとは思っていないようです。何でも診てくれる、相談に乗ってくれる医師をかかりつけと呼びたいのだと分かりました。 私のクリニックにも、多くの方が通院・受診しています。いつでも、何でも、誰でもまず診るというスタンスで診療してきたため、地域医療を守るかかりつけ医として認知されています。社会的にも一つのクリニックでまとめて診てくれることが、地域医療に必要とされていると実感しています。これからの日本の地域医療を考えていく上で、総合診療かかりつけ医を増やしていかないといけないと強く思います。
◇信頼関係を続ける
「かかりつけ」とは、医師と患者との間で信頼関係があって生じる言葉です。患者は自分に起きたすべての健康不安を医師に相談します。医師は責任を持って目の前の患者に起きたすべてのことを診察して不安を取り除き、次につなげます。このような関係が長く続けば、患者はその医師のことをかかりつけ医と呼ぶでしょう。 よくクリニックのホームページに「あなたのかかりつけ医です」のように書いてあるのを見かけますが、本当に何でも診ているのか疑問です。内科医が腰痛を診ているのでしょうか。外科医が認知症の相談に乗れるのでしょうか。「かかりつけ医」を軽々しく使うべきではありません。自分の命を守ってくれる医師のことを、受診する側が使う言葉だと私は思っています。 新型コロナウイルスの大流行の際、当初は日本のほとんどのクリニックが発熱や風邪の患者を診療しませんでした。診療難民があふれました。私のクリニックは真っ先に県と契約し、新型コロナウイルス抗原検査を開始し、発熱や風邪の方を診ました。もちろん、どんなウイルスかも分かりませんし、自分も含めスタッフに広がったらクリニックを閉めないといけないという不安はありました。しかし、熱を出した患者が困ると考えたとき、かかりつけ医として地域医療を守るのは開業医だと思いました。いまだに熱を出している方を診ないクリニックがありますが、信じられない気持ちです。 日本には約10万のクリニックがありますが、院長が高齢で平均年齢は約60歳です。以前も説明したように、特徴は、院長が高齢で専門に特化しており、日祝は休診です。これらを改善しないと、これからの地域医療が守られません。つまり、院長が30~40代であり、総合的に何でも診て、日祝も診療するクリニックが日本全国に広がれば地域医療が守れます。