AIエージェントは「アプリ経済」を終わらせるのか
最初に消えるのはエンタープライズ向けアプリ?
加えて、ユーザーがまだアプリを持っていないデータやサービスを見つけ、活用してくれるだろう。ショッピングや旅行では、よりお得な価格を見つけてくれたり、面会予定の相手の好みに基づいて、より良いディナーの場所を提案してくれたりするはずだ。 こうしたとき、なぜアプリが必要なのだろう? 少なくとも、ユーザーにとってアプリになじみはある。アプリとは、データサービスや、リアルタイムで生成可能なユーザーインターフェースの劣化版なのだろうか? アプリは消えてなくなるのか、あるいは今後のビジネスアプリと同様に、データレイヤー化するのだろうか? 個人的な意見を言えば、筆者が欲しいのはアプリではなく、アプリが生み出す体験だ。車を手配し、コーヒーを淹れ、銀行口座の残額を表示してくれればそれでいい。 ■最初に消えるのはエンタープライズ向けアプリ? エンタープライズ向けアプリのレイヤーが変化しつつある、という話は、誰もがかなり以前から耳にしているはずだ。マイクロソフトやセールスフォース、サービスナウ、オラクル、SAPをはじめとする多くのベンダーが、顧客が「1つの画面」で使えるインターフェースを提供し、生産性と効率性の向上を牽引しようとして、覇権を争っている。 マイクロソフトのCopilotやGoogleアシスタントは、マルチスレッドに対応し、論理的思考を提供するエージェントへと機能を拡大し、多種多様なデータサービスを横断して、道案内役や仲裁役を引き受けている(とはいえこれらのデータサービスは、おそらくはまもなくその役割を失うだろう)。 ビジネス向けのアプリケーションでは、時代遅れのユーザー体験しか提供できないケースも多く、コンシューマー向けのものと比べて使い勝手は悪い傾向がある。それだけに、この領域は破壊的変化が起きるチャンスに満ちた砦のように感じられる。 CRM(顧客関係管理)、ERP(基幹系情報システム)、HCM(人事管理)、SCM(サプライチェーン管理)といった、それぞれの目的に特化した数十のアプリのあいだを行ったり来たりするのではなく、ユーザーの希望に基づいて、継続的に適応し最適化される、ほぼリアルタイムのAI生成によるUXを操作し、提供することが可能になるだろう。 UIやUXは、統合されたオープンなデータのエコシステムから抽象化されるものとなり、ユーザーはニーズを明確に示すことが可能になる。だが、自分が必要としているものを伝えるだけで、エージェントが実際の作業を行ってくれるマルチモーダルな未来は、そう遠くないうちに実現されるだろう。 アプリは過去のものになろうとしている。もはや、それは時間の問題なのだ。
Daniel Newman