「日展」工芸美術で特選 大堀相馬焼陶吉郎窯の近藤学さん 今年、福島県浪江町に窯再建「励みになる」
美術団体「日展」は20日、第11回日展の洋画、工芸美術の入選者を発表した。工芸美術で大堀相馬焼「陶吉郎窯」窯元の近藤学さん(70)=福島県浪江町出身、いわき市=の作品「象嵌彩(ぞうがんさい) 晩秋の夕暮れ」が特選を受けた。2020(令和2)年以来、2度目の受賞。 秋の終わりの夕暮れ時、寝床に帰りたたずむスズメをモチーフにしている。赤土を縦47センチ、横58センチ、奥行き30センチに成形。表面に彫り込んだ線や面に色土を埋める「象嵌技法」で文様を表現した。夕刻の空気感が伝わるよう、焼く時間や回数などを工夫したという。 審査員からは「古くから伝わる技法を駆使し、詩情豊かな心象風景を作り上げている。さえずりが聞こえてきそうな優品」と評された。近藤さんによると、工芸美術の県内在住作家で2度目の特選受賞は初。 近藤さんは東京電力福島第1原発事故に伴い浪江町からいわき市に避難し、市内に窯を構えた。今年3月に町内に窯を再建しており「伝統を守ろうとまた大堀で手がけた作品が受賞し、励みになる」と話した。
日展は11月1日から24日まで、東京都・六本木の国立新美術館で開かれる。近藤さん以外に洋画、工芸美術で入選した福島県関係者は次の通り。 ◇県内在住者▽洋画=篠田ますい(福島)羽根田隆(相馬)▽工芸美術=高橋幸一、半沢敬子(福島)小林弘和、坂内憲勝(会津若松)近藤賢(いわき)菊地隆(白河)井上善夫(二本松)渡辺雅旺(会津美里) ◇県出身者▽洋画=志賀一男(宮城)大山富夫(埼玉)政木久美子、渡辺ひろ子(千葉)渡辺正博(東京)増田真人(神奈川)▽工芸美術=平野博次(千葉)