帝人が虎の子「めちゃコミ」の売却に至った切迫事情 現在は「潤沢に資金を使えるわけではない」経営状況
一方の帝人は、業績悪化にあえぐ。2023年度は約1兆円の売上高に対し、本業の稼ぎである営業利益は135億円だった。インフォコムの営業利益97億円を差し引くと、帝人の稼ぎはわずか38億円となる。 ■自動車関連や医薬で起きた誤算 ここまで収益が低下した要因は主に2つある。1つ目はマテリアル事業の赤字転落だ。 タイヤの補強材などに使われるアラミド繊維や、EV(電気自動車)市場での成長を狙った自動車向けの複合成形材料が低迷。2017年にアメリカの複合成形材料メーカーを約840億円で買収して自動車向けに力を入れてきたが、事業売却の可能性も含めて検討を進めている最中だ。
2つ目は、ヘルスケア事業の収益悪化。痛風治療薬「フェブリク」が2022年度に特許切れとなりシェアが急降下。2021年に武田薬品工業から糖尿病薬を買収したが、補完するには至らなかった。2021年度に432億円だったヘルスケアの営業利益は、2023年度に73億円まで落ち込んでいる。 実は帝人は2022年7月に、インフォコムに株売却を持ち掛けている。持ち株比率約34%を維持しつつ、残りを売却する方針だった。同年10月に帝人の業績悪化を理由に見送ったが、インフォコム株を継続保有する方針は不変だった。
風向きが変わったのは2023年9月。帝人が全株売却の方針に転換した。ただ、インフォコムは上場廃止となることを問題視。紆余曲折の末に今回の買収スキームに落ち着き、ブラックストーンの元で再上場を目指す方針を掲げることとなった。 上場廃止から2年間は、電子コミックとITサービスの事業分割を禁止する条件が付けられている。ファンドによる組織の解体を回避する意向が見て取れる。 ブラックストーンへの全株売却の発表と同時に、帝人は2024年度の業績予想修正を行った。営業利益は期初計画の260億円から160億円へ下がる見通しだ。インフォコムの稼ぎ分がなくなる影響はそれだけ大きい。発表翌日、帝人の株価は下落した。