従来のマーケティング手法は通用しない 「DevRel」で開発者の心をつかむ
「DevRel(デブレル)」とは、Developer Relationsの略語で、企業とデザイナー・エンジニアなどの開発者が良好な関係性を構築するための活動のこと。企業が開発者から自社の技術やサービスへの支持を得るために、イベントやブログなどさまざまな手法でつながり、信頼を得ることを目指します。ときには開発者からのフィードバックを得るなど、双方向のコミュニケーションを行い、改善につなげます。昨今は、世界的なIT企業からスタートアップまで、幅広い企業がDevRelを重視し、施策に取り入れています。狭義では、企業内で開発者との関係を構築する「役職やチーム」と理解されることもあります。
WWDC、Google I/O、AWS Dev Dayなど IT系カンファレンスが盛んな理由
毎年、その時期がやってくるとインターネットをにぎわすApple社の「WWDC(Worldwide Developers Conference)」。エンジニアやデザイナーなどの開発者を対象としたカンファレンスです。1週間にわたり開催され、Appleの最新技術を知ったり、新製品に触れたりすることのできる機会となっています。担当エンジニアと対面で話せるセッションもあり、Appleと開発者との関係性が深まる恒例行事です。 このような開発者向けカンファレンスは、DevRelの代表的な施策。カンファレンスの他にも、勉強会の開催、SNSでのコミュニティー運営、ミートアップやハッカソン、オープンソースの提供など、開発者の関係構築を目的にさまざまな取り組みが行われています。開発者からの質問に答えたり、トラブルシューティングを行ったりすることもDevRelの重要な役割です。 GAFAMからスタートアップまで、企業規模にかかわらず注目されている、DevRel。注目される理由には、ITビジネスの特性が関わっています。プラットフォーマーやAPI提供会社といった企業は「いかに自社サービスを使ってもらうか」がビジネス成功の鍵になります。プラットフォームもAPIも排他性が高いため、導入後、不都合がない限りは頻繁に乗り換えるものではありません。そこで企業は開発者とのつながりを深めることで、自社サービスを組み込んだ製品・サービスを開発してもらおうとしているのです。 もう一つの理由は、インターネット上で開発者へアプローチすることが難しいこと。認知を獲得するための代表的な施策として「広告」が挙げられます。インターネット上には、バナー広告やリスティング広告など多様な広告がありますが、開発者は総じてネットリテラシーが高いため、これらの広告を打っても効果は乏しいのが実状です。だからこそ、開発者が関心を持ちそうな施策を考え、つながりを持てるDevRelの必要性が高まっているのです。 DevRelの専任担当者を置く企業も増えています。開発者に対して適切なサポートができるよう、技術的な知識に加えて、コミュニケーション力やマーケティング視点を持ち合わせた人が担当者になるケースが増えています。 サービスを選定する際、人は必ずしも合理的な判断をするわけではありません。知り合いの顔が浮かぶ、以前に触ったことがあるなど、過去の経験をもとに選定するケースは少なくありません。社会全体でDXが推進され、マーケットがますます拡大する上で、DevRelの重要性は今後も増していくでしょう。