軽が日本のガラパゴスカーだなんてとんでもない! 排気量こそ違えど日本の「軽トラ」&「軽バン」は世界で愛されていた!!
海外で人気となっている日本の軽トラック
ネットニュースでときおり、日本の「軽トラック」、つまり軽自動車規格のキャブオーバースタイルのトラックが世界で人気といったテーマのリポートを見かけることがある。アメリカでは広い農場など、私有地内での移動を含め、日本からは想像できないニーズがあり、そして注目されているようである。 【写真】40年前の軽バンがシボレーから新車で出ている!? シボレー・ダマスとは 筆者は過去に東京都・福生市にあるアメリカ軍横田基地で行われる友好祭によく出かけていた。いまは基地内といってもかなり限定されたスペースしか立ち入ることができないようだが、筆者が出かけていたころは、一度基地内に入ればほぼフリーで歩きまわることができた。ドル紙幣をもっていき、基地内にあるバーガーキングやスターバックスコーヒーでまさに「本場の味」を堪能したり、いろいろ策を講じて基地関係者しか利用できない売店で基地の記念グッズやアメリカのお菓子、飲料品などを買っていた。 そして、もうひとつの楽しみが基地内にある軍関係者のマイカーや、アメリカ軍の車両を見ること。軍の車両では鉄ではなく黒い樹脂バンパーとなる廉価仕様のアメリカンピックアップなど、珍しいアメリカ車をチェックし、軍関係者はどんなクルマを好んでマイカーとして乗っているかをチェックして楽しんでいた。 その基地内で軍の車両として走りまわっていたのが、スバル・サンバートラック(スバルオリジナルのリヤエンジンモデル)であった。身体の大きいアメリカ兵が小さいサンバートラックを運転する姿はいまも鮮明に記憶に残っている。 話は思い出から令和のいまへ。先日旅行番組でエジプトを取り上げていたものがあった。大都市の街なかの風景が映し出されるとかなりの頻度で軽自動車のバンや軽トラックが走っていた。よく見ると年式によって仕様にバラつきはあるものの、スズキの軽商用車ではないかと確認できた。さっそくスズキのエジプトでのウェブサイトをみると、スーパーキャリイ、キャリイ・ピックアップ、キャリイ・マイクロバスというモデルが商用車としてラインアップされていた。 スーパーキャリイは800ccディーゼルと1.2リッターガソリンエンジンを用意し、車体寸法はガソリン車で全長3800×全幅1562×全高1883mmとなっている。日本国内ではタウンエーストラックとして販売している(いまは停止中)インドネシアでのダイハツ・グランマックス・ピックアップが1.3リッターガソリンエンジンを搭載し、車体寸法が全長4195×全幅1665×全高1850mmなので、グランマックスよりひとまわり小さいぐらい。ちなみにタイやインドネシアで販売されているキャリイは全長4195×全幅1765×全高1910mmとなっており、エジプトのスーパーキャリイよりかなり大きくなっている。 一方、キャリイ・ピックアップは970ccガソリンエンジンを搭載し、車体寸法は全長3240×全幅1395×全高1765mmとなっている。日本でのスズキの軽トラック「キャリイ」の歴代モデルで見ると、7代目(1979~1985年)から9代目(1991~1999年)あたりとほぼボディサイズは同じ。見た目も過去のキャリイに近いので親近感を覚えるが、トランスミッションはMTのみ、エアコンはおろかラジオすら装備されていないので、日本における軽トラックがかなり豪華に見える装備内容となっている。 似たようなモデルをパキスタンでも発見した。800ccエンジンを搭載し、車体寸法はエジプトでのキャリイ・ピックアップとほぼ同じで、価格は185万6000パキスタンルピー(約95万円)となっていた。 さらに調べると、エジプトでのキャリイ・ピックアップと同年代のモデルは、かつてイギリスでも、ベッドフォード(のちにボグゾール)・ラスカルとして販売されていたとのこと。 そして、有名なところでは、韓国・大宇(現GMコリア)では「ラボ」という車名で2021年までラインアップされていた。これは、8代目キャリイをベースに800㏄エンジンを搭載していた。ICE(内燃機関)を搭載する軽バンの「ダマス」と軽トラックの「ラボ」は絶版となったが、その後、韓国のビバ・モビリティがこれらの車種をベースとしたBEV(バッテリー電気自動車)を開発し販売している。 また、ウズベキスタンにある、大宇自動車(現GMコリア)との合弁企業となる「UZオート」では、いまだに「シボレー・ダマス」、「シボレー・ラボ」としてラインアップされている。ここで取り上げたのはまさに一例であり、まだまだ軽トラックや軽バンが走っている国はあるものと考えている。 こう見ると、いまの日本からの日本仕様の軽トラックを輸入して愛好するという海外の「軽トラックブーム」のようなムーヴメントとは別に、スズキを起点として数多くの国々で地元に根付きながら愛用される軽トラックという姿を確認することができた。