課題山積の中小企業…成長のカギは「地域連合」? 城南信金トップに聞く
日本経済が回復基調に転じる一方、多くの中小・零細企業は長引く円安やコスト高、人材確保のための賃上げで、苦しい経営を迫られている。さらに、日本銀行の政策変更によって、「金利のある世界」も戻りつつあり、借り入れの負担増も懸念される。 こうした課題を抱える中小企業に向き合うのが「街の金融機関」とも言われる信用金庫だ。今月、東京や神奈川を拠点に約5万5000社の取引先を持つ城南信用金庫の新トップに就任した林稔理事長に、中小企業の抱える課題と解決策を聞いた。
■中小企業がなお苦しむ価格転嫁、好調賃上げも「防衛的」
――取引先の中小企業が置かれている現状をどう見ているか 城南信用金庫・林稔理事長「報道では、大手を中心に賃上げを行い、業績もかなりよくなってると言われているが、我々のお客様には中小企業・零細企業が非常に多い。アンケートでは、ほとんどが賃上げや価格転嫁が(完全には)できていないと言っている(※24年3月の調査で、取引先への価格転嫁が「完全にはできていない」と回答した企業が約82%、賃上げについて「決めていない」「予定がない」と回答した企業が約64%)。きちんと価格転嫁の交渉をするようにお話しして、成功するところもあるが、取引先の中では「やっぱりこれ(価格転嫁)を言っちゃうと、仕事がなくなっちゃうんじゃないか」というイメージを持ってる方がまだまだ大半以上いらっしゃる」 「大手が(業績が)よくなって、何年か後に中小企業が同じようによくなってくるという循環は過去にもあったが、今回は少し違うのかなと肌では感じている。円安等(の影響)もあるが、人手不足があるので、賃上げをする理由が前向きな理由ではなく、人材が逃げないような形で賃上げをせざるを得ない、というのが現状ではないか。その(賃上げの)原資が今、伴っていないので、非常に苦しい時代を迎えているのかなと思う」
■コロナ禍で中小企業の借り入れ増加 日銀の追加利上げ「かなり慎重にされた方がよい」
――日銀の金融政策の変更で「金利のある世界」が戻りつつあるが、金融機関としての戦略は 城南信用金庫・林稔理事長「“粘着性のある預金”(有事などの際にも流出しにくい資金)の確保が、特に信用金庫や地域金融機関にとっては一番の課題になってくる。ただ金利が上がった分、お客様(取引先)が赤字になってしまったら元も子もない。安全な預金を提供し、取引先が苦にならないような適正な金利を設定しながら、企業が成長し、我々の収益も上がるようにしたい」 ――日銀による追加利上げも今後、想定される。取引先の中小企業は、金利上昇の可能性をどう捉えているか 城南信用金庫・林稔理事長「コロナ禍があり、ゼロゼロ融資(新型コロナの影響で売り上げが減少した個人事業者や中小企業に対する実質無利子・無担保融資)があって、一部の企業では借り入れが非常に膨らんでいる。さらに資源高や円安などがある中で、ここで金利が一気に上がっていくと、やはり厳しいのではないかと感じている。(日銀は)金利の対応はかなり慎重にされた方がよいのかなと思う」