「提案書」作成のAIスタートアップ企業、オートジェンAI社が創設約2年で56億円調達。グローバル展開加速へ
生産性は342%向上、作成にかかる時間は最大70%短縮
オートジェンAIは、このソフトウェアが提案に与えるインパクトを、数値で明確に示すことに成功している。オートジェンAIを利用した場合、落札する確率は30%上昇。1億米ドル(約141億円)以上に値する追加業務が発生したことになる。 また従来の方法で提案書類を作り、最終的に落札した場合、契約総額の約10%が、書類作成のコストに食い潰されるという。その一方でオートジェンAIを利用すれば、最大で85%もコストが削減できるそうだ。 提案書類を作成する期間については、従来であれば、1つを仕上げるのに何百人というスタッフが関わり、約半年を費やしていた。しかし、オートジェンAIを使用すれば、生産性が342%向上。作成にかかる時間は最大70%短縮されることになる。
過去約2年間に約50の顧客を獲得
オートジェンAIは、フォーチュン500に入る企業、国際政府機関、経営コンサルタント会社、建設会社のほか、慈善団体や非営利団体も顧客としている。米国の経済、金融情報の配信・通信社、ブルームバーグ社による昨年12月下旬の記事によれば、創設から記事執筆までの間に約50の顧客を獲得したそうだ。しかし、顧客名は一切公表していない。その理由をウィリアムズ氏は、テック系メディアである『テッククランチ』のインタビューで、未だにAIを使うと仕事の質が落ちるという風潮があるためと説明している。 そんな中、オートジェンAIは英国政府のAIフレームワークに指名され、国内のすべての公共部門にサービスを提供するようになったことを公表している。
AIは提案作成者の仕事を支援するツール
オートジェンAI社は、同社のソフトウェアなどのAIが人間に取って代わることはないと考える。人間の能力を高めるAIを利用する企業は、利用しない企業より優れた業務成績を上げる。AIは与えられたデータに基づいてのみ機能し、営業活動で重要な位置を占める、感情的なつながりを表現することはできない。AIは人間の能力を増強し、AIなしではあげることが難しい成果の、さらに上をいく成功を手中に収めることを可能にする。 オートジェンAIは提案書作成における単純作業を自動化し、人間であれば、長時間かかるような仕事をわずかな時間で処理してくれる。提案書作成者はその分の時間を、創造力を必要とする、新たなアイデアを生み出すなどの、より複雑な仕事に充てる。当然のことながら、生産性は飛躍的にアップする。結果的に、オートジェンAIを取り入れて作られた提案書は、従来の方法で書かれた提案書を凌駕する。 ウィリアムズ氏はブルームバーグ社に、「『Excelなしに財務モデルを作成する人はいない』。それと同じように、『オートジェンAIなしにテンダーオファーをする人はいない』と言わせるまでになりたい」と、同ソフトウェアを世界的なヒットにしたいと意気込む。同社は、昨年9月にオーストラリア、10月に米国に進出を果たしている。2025年までにはシンガポールと香港にオフィスを設立する計画だ。
文:クローディアー真理 /編集:岡徳之(Livit)