国民民主党の躍進の背景に投票マッチング?「103万円の壁」など若者向け政策はSNSやネット診断と相性抜群
■ 「自分たちは幸せだ」と考えている若者たち 原田:そうした理由で国民民主党に投票した若者は非常に少ないと思います。今の30代の研究も私はしていますが、政治離れは年々加速しています。子どもができても、社会に対する責任感が高まっていく人は少数派で、大抵は身の回りの娯楽で満足しています。 現在の若者を取り巻く就労環境が非常に恵まれていることも指摘しておかなければなりません。就職率も高いですし、転職も難なく決まります。他国では就職難にあえぐ若者が多いことを見ると、実に対照的です。日本の若者はとても恵まれていて、自らの人生も「幸福だ」と考えているのですよ。 加えて、30代の納税意識は果たして高いと言えるのでしょうか。納税を自らしなければならない自営業者と比較して、サラリーマンはそれを会社が代行してくれます。納税意識が低いと、「社会保険料の高さ」や「基礎控除額と手取りの関係性」などを自分ごととして理解できないと思います。 ──今回の衆院選は「自公離れ」が顕著でしたが、20~30代が流れた先が国民民主党、60代以上は立憲民主党、という世代間の投票行動の違いも鮮明でした。 原田:確かに、国民民主党の躍進は今後の政界を揺るがす事態となるかもしれません。2025年問題をはじめ、学生運動に明け暮れ、終戦直後の動乱期に生まれ育った政治意識の高い団塊世代が後期高齢者になります。これまで元気に政治に参加していた人口のボリュームゾーンが、どんどん縮小していきます。 そうした中で、国民民主党はネット空間でこれまでの政党とは質的に異なる支持を取り付けました。玉木代表に先見の明があったのは「SNSで若者の心に響くアジェンダを喚起できれば、必然的にそれが上の世代にまで広がっていく」という事実を早くから掴んでいたところに表れています。 国民民主党を支持し、SNSを「ジャック」したのは少数の若者かもしれません。しかし、今や40~50代の半数近くがSNSを日常的に見ている時代です。政権与党の「キャスティングボート」を握ることができるようになるまで成長した国民民主党のネット戦略を、既存政党は見習ったほうがいいと思います。
原田 曜平/湯浅 大輝