米国が中国製鋼材とアルミの「301条」関税3倍に引き上げ。ホワイトハウスが声明、大統領選控え「鉄鋼労組対策」
米国・ホワイトハウスは17日、米国通商代表部(USTR)に対し中国から輸入される鉄鋼とアルミニウムに適用する「通商301条」に基づく税率を3倍に引き上げるよう求めると発表した。同日にUSTRは中国の造船、海運、物流を対象に調査を開始すると発表。全米鉄鋼労組(USW)など労働組合を意識した政策を示した形だ。 現状、301条の対中措置で課している鉄鋼やアルミの輸入関税は平均7・5%。ホワイトハウスは「政策や補助金で人為的に値段を下げ、環境負荷も大きい中国の鉄鋼、アルミが高品質な米国製品にとって代わっている」と指摘。301条の税率を3倍にし「実効性を高めるよう求める」としている。 USTRによる中国の造船、海運、物流分野に対する調査は、USWなど五つの労組が3月に請願書を出し求めていたもの。労組側は、中国がこれら海事産業を支配するため不公正で非市場主義的な政策や慣行を利用しているとし、キャサリン・タイUSTR代表は「労組の懸念について徹底的に調査することを誓う」と声明でコメントした。 ホワイトハウスの発表は、商務省が鉄鋼関連で30件を超えるアンチダンピング(反不当廉売=AD)や相殺関税(CVD)措置を課し、さらに27件のAD調査を行っていることを説明。中国などの鋼材やアルミがメキシコを経由し米国へ輸入されることを防ぐため直近メキシコへ高官を派遣したことや、インフレ抑制法のもと最大15億ドルで6件のグリーン鋼材生産プロジェクトを後押しすることを強調した。 3月に米エネルギー省はオハイオ州ミドルタウンで高炉を電炉に置換するクリーブランド・クリフスなどの設備投資を助成すると発表していた。ホワイトハウスはこれを改めて示した格好。声明では方向性電磁鋼板を造るクリフスのペンシルベニア州バトラー工場も支援対象であることを前面に出し、鉄鋼業が盛んで大統領選のスイング・ステートとされるペンシルベニア、オハイオに向けバイデン政権が必死にPRする様があからさまとなっている。