早起きでつくる“子どものこころとからだの健康”。「良い睡眠」の正しい取り方とは
思春期は睡眠のリズムが狂いやすいので気をつけて
太陽光がむずかしい場合は明るい光でも大丈夫です。Amazonなどでは光で起こしてくれる目覚まし時計が売っていますね。 ここでいう明るい光とは、普通の家の照明よりもっと明るい光のことで、コンビニの灯りをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。明るいじゃないですか、コンビニって。なので、夜中にコンビニに行くと睡眠が狂っちゃう人も多いですね。 睡眠は乱れやすい人と乱れにくい人がいて、一般的には女性の方が女性ホルモンの影響で乱れやすい。そして思春期の子どもも乱れやすいんです。 ただでさえ「世界で一番眠らない日本の子どもたち」(※1)と言われていますから、睡眠リズムをきちんと整えて、十分な睡眠時間を確保してほしいですね。 ※1 Jodi A Mindell博士らが2010年に行った『世界17の国(地域)における0~36か月児の睡眠に関する調査』によると、3歳以下の子どもの1日あたりの総睡眠時間がもっとも短かったのは11時間37分の日本。もっとも長かったニュージーランドとは1時間40分もの差があった。 経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査でも日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、加盟30か国の中で最下位。全体平均の8時間24分とほぼ1時間もの差があり、乳幼児だけでなく日本人全体の睡眠時間が短いと言える。
寝だめはNG! 平日と休日の睡眠時間は大きく違わないほうがよい
また休日の「寝だめ」にも注意です。平日の睡眠不足を解消しようと、休みの日に普段より遅くまで寝ている子どもは多いと思いますが、睡眠を「ためる」ことはできません。むしろ体内時計の乱れを招き、休み明けの登校日の朝の目覚めを悪くさせます。このような生活では睡眠の貯金はできずに、睡眠負債だけが貯まるのです。 起床時刻を普段より3時間遅らせた生活を2日続けると、高校生では体内時計が45分程度遅れるとされています。こういったリズムの遅れは、とくに夏休みなどの長期休暇後に大きくなるので注意が必要です。 必要な睡眠時間というのは一人ひとり違いますが、睡眠時間が足りているかどうかの目安としては、日中の眠気の程度に注意するとよいでしょう。 小学生くらいの子どもたちが学校で寝てしまう、起きていられないほどの眠気を訴えるというのは、睡眠が良くないと思いますね。中学生くらいになると、反抗して寝るという場合もあると思いますが。 ――先日、厚生労働省が年代別に推奨する睡眠時間を示したガイドラインを取りまとめて話題になりました。10年ぶりとなる改定案では、小学生が9~12時間、中学・高校生が8~10時間の睡眠を推奨されています。共働き家庭で平日の小学生を12時間眠らせることは至難の業ですが、毎朝決まった時刻に起こして朝日を浴びさせるくらいであればハードルが下がりますよね。 次回は「睡眠不足が引き起こす行動上の問題」について宇佐美先生にお話を伺います。 【PROFILE】宇佐美 政英(うさみ・まさひで) 児童精神科医。国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科診療科長、子どものこころ総合診療センター長、心理指導室長。日本児童青年精神医学会認定医・代議員、日本ADHD学会理事、精神科専門医・指導医、子どものこころ専門医・指導医、厚生労働省認知行動療法研修事業認定スーパーバイザー。