全早稲田戦で“引退登板”の佐竹功年 「あらためて、野球を続けてきて良かった」
9月からスポーツ関連の部署に異動
都市対抗優勝2度、社会人日本選手権優勝6度。年間表彰でも2度(2014、16年)にわたるベストナイン、最多勝利投手賞、最優秀防御率賞の3冠に輝いた。都市対抗初制覇へと導いた16年はMVPにあたる橋戸賞を受賞。侍ジャパン社会人代表でも長く活躍し、社会人球界のまさしくレジェンドだった。 今年1月、都市対抗限りでの現役引退が発表された。社会人野球は一般的に秋の社会人日本選手権がシーズンの一区切りとなるが、佐竹は長年の功績が認められ、前年覇者で推薦出場が決まっていた都市対抗で「男の花道」が用意されたのである。最後まで全力を貫いたからこそ、2回戦敗退後は涙を流した。 そして、最終マウンドは母校・早大を相手にした全早稲田戦。試合後に本音を語った。 「もう、一歩も走りたくない(苦笑)。ウエートトレーニングはやるかもしれませんが、ランニングだけは……もう……」 現役の晩年は「おじさんパワーで、頑張ります!!」と、いつも笑顔で語っていた。弱音を吐くことは、一切なかった。誰よりも汗を流し、走り込みの量が投球の支えだった。頼りになる「ミスター社会人野球」だった。 早大・小宮山監督は「社会人で19年もプレーできたのは、努力の賜物。早稲田にとっても、シンボリックな存在でした。今後も社会人の顔として、さまざまな活動をしていくと思いますが、日本の野球界のために尽くしてもらいたいと思います」とエールを送った。 佐竹は「サラリーマンですから、自分で決められることではない。9月からスポーツ関係の部署に異動します。その後のことは分かりません」と、あくまでも野球部の現役引退は「社内の人事異動」と強調する。とはいえ「恩返し」への思いは、当然ある。 「仮に野球関連のお話をいただいたときには、全うできる準備だけはしておきたい。指導者? やれと、言われれば、やります。社会人として新しい立場になり、選手から離れて、さまざまな勉強をしていきたいと思います」 アマチュア球界の宝は影響力抜群。第二の人生で活躍する場は、たくさんあるはずだ。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール