最新作が楽しみすぎた風間俊介が、“ビートルジュース愛”を語り尽くす!「積み重ねてきた年月が、映画のなかに閉じ込められている」
ティム・バートン監督最新作『ビートルジュース ビートルジュース』がいよいよ9月27日(金)より日本公開となる。バートン監督の出世作となった『ビートルジュース』(88)の35年後を描く本作は、ひと足先に公開された全米では3週連続のNo.1、全世界興行収入3.3億ドルを突破する驚異的大ヒットを記録している。 【写真を見る】左は『ビートルジュース』出演時、右は『シザーハンズ』出演時のウィノナ・ライダー! MOVIE WALKER PRESSでは、『ビートルジュース』の大ファンで、本作の公開が発表された際にはあふれんばかりの想いをSNSに投稿していた風間俊介にインタビューを敢行!作品の見どころはもちろん、前作から続投したキャストへの想いやバートン監督が創りだす世界観の魅力、さらなる続編への持論までたっぷり語ってもらった。 3回名前を呼ぶと、死後の世界から現れるお調子者の人間怖がらせ屋、ビートルジュース(マイケル・キートン)。彼の野望は、死後の世界を飛びだし人間界へ移り住むこと。そのためには愛する人間リディア(ウィノナ・ライダー)と結婚しなくてはならない。この無謀すぎる婚活計画に、なんとチャンスが到来!リディアの一人娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)が死後の世界に囚われてしまい、リディアから結婚を条件に娘の救出を依頼されたのだ。しかし、時を同じくして、死後の世界の倉庫に閉じ込められていたビートルジュースの元妻ドロレス(モニカ・ベルッチ)が復活。人間界を巻き込んだハロウィン史上最大の大騒動へと発展していく。 ■「35年経ったことをしっかり描いた物語は、ファンとしてはかなりグッとくる」 本作を鑑賞後、開口一番「リディアの時間経過が観られたのがうれしくて…」と笑顔を見せた風間は、「お約束みたいなものをちゃんと僕たちに渡してくれるのはすごくグッときました。『ビートルジュース』のあの世界がまだ残っていたんだ!と感じさせる部分があって。逆に予想外のこともいっぱいあったけれど、“待ってました!”感が随所にありました。まあ『ビートルジュース』の続編自体が“待ってました!”なんですけれど(笑)」と楽しくてたまらない様子。 36年ぶりの続編であった本作だが、その描き方について「前作の2年後みたいな設定でキャストを一新するという方法もあったはず。だけど、マイケル・キートン、ウィノナ・ライダー、キャサリン・オハラが同じ役を演じ、これまで積み重ねてきた年月を映画のなかに閉じ込めていることが、すごくすてきに感じました。35年経ったことをしっかり描いた物語も、『ビートルジュース』好きとしてはかなりグッとくるポイントでした」と、長年のファンとしても大満足であったことを語る。 そんな風間は、自身のXでその想いを語るぐらい、前作『ビートルジュース』でいまなお語り継がれる名曲「Banana Boat」と「Jump in the Line」が流れ、登場人物たちがダンスするシーンが特に好きなのだとか。「今回はあのシーンを大好きだった人がニヤリとするシーンがしっかりありました。僕は、歌いたくないのに、歌っちゃう陽気な曲が流れるシーンがすごく好きみたいなんです。それに気づいたのが『ビートルジュース』でした」と、時折フレーズを口ずさみながら、ビートルジュースにハマったきっかけを教えてくれた。そして本作での音楽の使われ方については、「前作ではラテン系でしたが、今回はソウルフルなダンスミュージックで、ファンにもたまらない作りになっていると思います」と太鼓判を押す。 ■「リディアがあの屋根裏部屋にいることで、もう震え上がりました」 バートン監督作品では『ビートルジュース』と『シザーハンズ』(90)が特に好きとのことで、両作品でヒロインを演じたライダーについて、トークに熱がこもる。「『ビートルジュース』のリディアと『シザーハンズ』のキム。どちらもウィノナ・ライダーだとわかっているのに、同じ人が演じていると認識できなくて。初めて観た時は『すごいな…』って思いました。そんな彼女が36年経って、ちゃんとリディアをやってくれたことに感動です。リディアという役は、ある種、若かりしころの“きらめき”でしか演じられないもので、大人になってから『またやってください』と言われたら、結構勇気がいると思うんです。それをいまもリディアとして、しっかりと成立させている。本当にすばらしい!のひと言です」と、バートン監督が描くゴシックな世界観に、36年経ってもハマっているライダーの唯一無二の存在感を再認識したと興奮気味に話した。 本作では特にリディアのシーンにグッとくることが多かったそう。「まずリディアがあの屋根裏部屋にいるってことで、なんかもう震え上がりました。僕も昔やった作品をもう一度撮るとなった時に、当時と同じように作ったセットに立ったら、すごく不思議な感覚になったことがあるんですよ。だから、あの場所にリディアが立っていることで、それと同じような感覚になりました。ほかにも、娘のアストリッドがめくったアルバムの中にリディアの写真があるシーンは、幼少期からいまのリディアまでが“ズドン”と屋根裏部屋の中でつながる感じがして、今回一番エモかったです。アストリッドが模型の布を引く時の画角とかも、前作のリディアの動きと重なる部分があって。実際に同じようにしているかどうかはさておき、ある種のフラッシュバック、記憶を呼び起こされた感覚がありました」。 ■「人間は変化したことを描きたいけれど、どこかで変化していないことを望んでいたりもします」 ビートルジュース役のキートンについては、「前作の後に撮り溜めておいたのかって思うほどでした。マイケル・キートンに36年は関係ありません!」と、まさに”この世のものではない“キートンの表現力を大絶賛。「キャストが続投と聞いて、喜びと同時に『大丈夫?』と思った人もいるはずですが、ちゃんとビートルジュースなので安心してください。前作でアカデミー賞メイクアップ賞を受賞した系譜もあるし、現代技術をたくさん導入しているはずではありますが、それを全部差っ引いても、すばらしかったです。だって、マイケル・キートンっていま、73歳。『いやいやいや』って思うじゃないですか。やっぱりビートルジュースが年を取っていたらダメですもんね。一瞬だけ月日を感じるシーンが実はあったのですが、それは、僕たちがあれから36年経っていて、マイケル・キートンは73歳だと思って観ているからですね」。 俳優や声優などで長年活躍し続けている風間に、長い期間にわたって同じ役を演じるおもしろさや難しさを聞くと、「僕が思い描いている年齢の取り方と、役としての年齢の取り方、観てくださる人たちが望んでいる年齢の取り方の“間”を、どう探ればよいのかが僕のなかでのポイントになっています」と役へのアプローチを明かす。 「人間は変化していくものだから、変化したことを描きたいけれど、どこかで変化していないことを望んでいたりもします。現実世界は時の流れがあるけれど、例えば『ビートルジュース』での死後の世界では、あの時(前作)からなにも変わっていないはずです。だから今回も、映画には出てきていないけれど、この世界のどこかに存在しているんだろうなというキャラクターの空気も感じられました。変わった世界と変わらない世界が混在している。35年経って変化している世界を見たいと思いながら、変化していない世界を見たいというファンにとってはベストな役割分担になっています」と、芝居をする上での自身のアプローチと重ねて、本作の世界観について分析していた。 アニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」の武藤遊戯役を20年以上演じ続けている風間。久々に出演する際は、ある種のお祭りのような感覚があるそうで、『ビートルジュース ビートルジュース』ではファンとしてのお祭り感も実感できたとのこと。「遊戯役は、1回出演すると10年くらい空くこともあるので、やらせてもらえるのはシンプルにうれしいし、ある種お祭りのような気分になるんですよ。だから、『ビートルジュース』の続編あるよと聞いた時もファンとしてそんな気持ちになりました。作品が愛されているからこその新作、続編。と同時に、間が空けば空くほどファンのみんなは最初に打ち立てられたものを擦りに擦りまくるから、だんだんシビア感が増してくる。今回で言うなら、“俺たちの『ビートルジュース』感”が年々増したはずで、作るのにも勇気がいると思います。そして、だからこそ喜んでもらいたいという作り手側の気持ちもとてもわかります…」と長年愛される作品に出演する側、そして、長年愛する作品のファンとしての想いを明かしてくれた。 ■「ティム・バートンが見出す人たちは本当に最高」 キートン、ライダー、オハラの続投組に加え、本作ではバートン監督作品らしい個性が強すぎる新キャラたちも存在感を放っている。ジェナ・オルテガが演じるアストリッドについては、「超常現象を望んでいるけれど、実際に起きたそれは思っていたのと全然違っていたというある種のナンセンスさが魅力だった前作。この超常現象に対して懐疑的なキャラクターとしてリディアの娘が登場する。この塩梅がすごくすてきだと思いました」 インタビュー中に手にした資料で、同じくバートンが手掛けたNetflixオリジナルドラマ「ウェンズデー」でオルテガがウェンズデー・アダムスを演じたことを知った風間は、「どうりで!死後の世界に囚われたアストリッドの目の下のクマ、表情や動きの一つ一つに、堂に入っている感があったから(笑)」と膝を打つ。「ウィノナ・ライダーはもちろん、ヘレナ・ボナム・カーターもそうですし、今回のジェナ・オルテガといい、ティム・バートンが見出す人たちは本当に最高ですよね」と、時代時代で作品を彩るミューズを見出すバートンの手腕を称賛していた。 そして、アストリッドが出会う近所に住むミステリアスな青年、ジェレミーもお気に入りであるとのこと。「めちゃくちゃすてきでした。出てきた時はぼくとつとしていて、田舎の男の子って感じなのに、あるシーンから違和感が出始めて、最後のほうの演技や表現はすごいと思いました」と、本作で映画俳優としてデビューを果たしたアーサー・コンティの芝居を絶賛していた。 ■「予算があってパワーアップしているのに、“あえてミニマムに”というところにセンスを感じます」 バートンワールド全開となった本作は、バートン監督の過去作をごちゃ混ぜにしたような世界観でもあったと風間は指摘する。「ウィレム・デフォーが演じるウルフの脳みそがちょっと出ている感じとか、まさに『マーズ・アタック!』と思いました。ほかにも『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『(ティム・バートンの)コープスブライド』…いろいろなものを思い出させてくれました。模型のシーンで始まるのはもちろん前作と同じでしたね。『シザーハンズ』ではクッキー工場でクッキーが流れているシーンから始まりますし、こういったティム・バートンが世界観にいっきに引き込もうとする手法は本当に大好きです」 このどこか一貫するバートン監督のイマジネーション。本作でもそのこだわりと愛は発揮されており、ほとんどCGを使わない手法で撮影されたのだという。この“手作り感”ともいえる質感を、風間はどのように感じたのだろうか。「いまの技術なら、本物と見間違うようなものが描けるはずです。なのに、粘土のようなあの感じを出していて、作り手たちが素材感として大事にしたのだと思いときめきました。いまの技術なら消せるはずのものをそのまま残しているし、明らかに予算があってパワーアップしているのに、“あえてミニマムに”というところにセンスを感じます。サンドワームも出てくる砂漠で走るシーンは、絶妙にちょっとダサい!走り方もその場で足踏みしている感があって、あのシーン最高だったな(笑)」と、大爆笑で振り返っていた。 ■「僕のなかでは今回で『ビートルジュース』の世界は完成した」 ビートルジュースはUSJのアトラクション内でのDJとしても人気を集め、近年ではミュージカル化もされている。作品の大ファンの風間が思う、ビートルジュースのコンテンツとしての魅力はどんなところにあるのか?「まずはキャラクターとして、“残酷性”と“コメディ”のバランスが最高の配分だから。例えば、見た目が近くてこの2つを持っているジョーカーも僕は大好きだけど、ビートルジュースよりやっぱり暴力性がほしいですよね。ジョーカーには暴力性とそれを笑っていることの怖さをはらんでいてほしいけれど、ビートルジュースにはそれがなくて、ちゃんと噛ませ犬なところがいいんです(笑)。ちょっと『男はつらいよ』の寅さんのように、『最後振られてかわいそうだね。でもさ、僕たちはそういうところを愛するんだよ』みたいなところがビートルジュースにはあるんです。でも健全なキャラクターでは決してないので、『健やかなものだけじゃないのがほしい』と言う人には、ビートルジュースは最高の配分キャラクターなんじゃないかな」とニヤリ。 さらに、アンソニー・ホプキンスが自身の尊敬する俳優だと前置きしたうえで、なぜビートルジュースが世界的なホラーアイコンになったのか持論を語ってくれた。「僕も20代のころから罪を犯す役や、人の気持ちがわからない役を数多やらせてもらいましたが、その最高峰にはアンソニー・ホプキンスが『羊たちの沈黙』で演じたハンニバル・レクターがいるんです。名作だし、人気のキャラクターではあるけれど、テーマパークのパレードにハンニバル・レクターが出てきたら…(笑)。出そうと思う人はいないですよね。でもビートルジュースなら大丈夫。ちょっとダークな部分もあるけれど、出てきたら『わー!』って喜べるキャラクターというのが、最大の魅力なんじゃないかなと思います」。 最後に続編についての期待について尋ねると、「僕の解釈では、前作の『ビートルジュース』、今回の『ビートルジュース ビートルジュース』で、すでに3回名前を唱えちゃっているからここで完結かな」ときっぱり。「どんな解釈もできるし、大好きな作品だから次に『ビートルジュース ビートルジュース ビートルジュース』を作って本当に完結するのもいいなと思うし、もちろん観に行きます(笑)。でも、今回のタイトルを聞いた瞬間に、前作のタイトルと合わせて『おおおお!3回唱えた!!』ってなったし、作品の描かれ方もすばらしかったので、僕のなかでは今回で『ビートルジュース』の世界は完成したと思っています」。 取材・文/タナカシノブ