「西武」歴史的低迷に「勝率3割台はフロントの責任」…元「ヤクルト主砲」が明かすライオンズの黄金期「投手も打者も完璧で圧倒された記憶しかない」
勝っても強かった西武
「西武の圧倒的な強さを目の当たりにして、『西武に勝つには、セ・リーグの試合でまごまごしているようじゃダメだぞ』と誰もが気づいたんです。巨人と広島がライバルのままでは西武には勝てない。自分たちが桁違いのレベルアップを果たす必要があると心の底から実感し、チームが“打倒西武”で団結したのです」(同・広澤氏) 選手たちが意識改革を果たしたヤクルトは強かった。1993年のセ・リーグはヤクルトが2位の中日に7ゲーム、3位の巨人には16ゲームの大差をつけて優勝。セ・リーグのMVPと最多安打は古田敦也氏、最優秀新人賞は伊藤智仁氏、打点王は広澤氏が獲得した。 打倒西武を誓って再戦した日本シリーズはヤクルトの4勝3敗でリベンジを果たした。だが、やはり西武は強かったという。 「負けたときに相手チームが強く思えるのは当たり前ですが、西武の場合は自分たちが勝っても強いという印象が残りました。また変な話ですけれど、西武に優勝した後のオフは大変なことになったんです。テレビの出演依頼が殺到し、お酒の席への誘いも桁違いで、これも強い西武に勝ったからだと実感しました。少し遊びすぎてしまい、翌年のシーズンに差し障りが出たほどです(笑)」(同・広澤氏)
上司はどっちを向いている?
やはり広澤氏の話を聞けば聞くほど、西武の現状が信じられない。一体、球団の中で何が起きているのか訊くと、「ローマは一日にして成らずという格言があります」と言う。 「勝率3割台も同じように“一日にして成らず”です。勝率3割台の責任は現場に、特に選手にはないと断言してもいいでしょう。これだけ負けるのは、選手ではなくフロントに問題があると言わざるを得ません。それも長い時間をかけて、ゆっくりとチームを蝕んでいったのだと思います。もし西武が本気でチームを立て直す気があるのなら、ドラフト、育成、チーム編成の3点が特に問題があるはずなので、抜本的な改善を行うべきです」 広澤氏は公認会計士の藤間秋男氏が上梓した『100年残したい日本の会社』(扶桑社)を読み、文中で紹介されている企業のうち、数社を訪問したことがあるという。 「業種は様々でも、共通点があることに気づきました。それはトップから新入社員、場合によってはパートの皆さんまで、誰もが同じ方向を向いているんです。同じ目標を共有し、ごく自然に一致団結しているわけです。考えてみれば1993年のヤクルトも同じだったかもしれません。プロ野球選手には会社員と同じところがあり、『上司が誰を向いて仕事をしているか』には敏感です。西武のフロントは選手のほうを向いて仕事をしているのか、はたまた別のほうを向いているか、彼らはちゃんと分かっています。西武の選手が自然に一致団結できる環境を作れるかどうかにチームの未来はかかっていると思います」 デイリー新潮編集部
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