「たんぱく質だけ」と思っていない?「鶏のむね肉」を食べるメリット【管理栄養士が解説】
近年、健康に気を付けている方は積極的にむね肉を選ぶ傾向があります。鶏のむね肉は高たんぱく・低脂質な食材として知られていますが、代表的な栄養素はたんぱく質だけではありません。この記事ではもも肉と成分の違いを比較しながら、むね肉を選ぶメリットを解説していきます。 〈写真〉「たんぱく質だけ」と思っていない?「鶏のむね肉」を食べるメリットとは ■むね肉の特徴は? むね肉は鶏の胸の上部に位置する部位です。鶏肉の部位の中でも脂肪が少なめでたんぱく質が多いことで知られています。肉質は柔らかく、あっさりとしてたんぱくな味ですが、脂肪が少ないので加熱すると身が固くパサつきやすいのが特徴です。 ■もも肉の特徴は? 鶏の脚の付け根の部分にあり、赤身のかかった色をしています。筋肉質で弾力のある身ですが脂肪を程よく含むのでコクがありジューシーなのが特徴です。 ■むね肉ともも肉の栄養成分の違いは? 以下は、100gあたりの皮つきと皮なしのむね肉ともも肉の栄養成分を示したものです。 皮つき鶏むね肉 ・エネルギー 229kcal ・タンパク質 19.5g ・脂質 17.2g 皮つき鶏もも肉 ・エネルギー 234kcal ・タンパク質 17.3g ・脂質 19.1g 皮なし鶏むね肉 ・エネルギー 113kcal ・タンパク質 24.4g ・脂質 1.9g 皮なし鶏もも肉 ・エネルギー 128kcal ・タンパク質 22.0g ・脂質 4.8g むね肉は高たんぱく・低脂質、もも肉は脂肪が多いというイメージを持つ方も多いと思います。しかしこれらの数値を見ると、皮を取ればむね肉も、もも肉もたんぱく質と脂質の量に大きな差がないことがわかります。 ■むね肉ともも肉の大きな違いは? ■■むね肉には抗疲労成分+ビタミンB6が豊富! 鶏のむね肉にはイミダゾールペプチドという成分が豊富に含まれます。これは疲労の回復の他、強い抗酸化作用が期待できる成分です。イミダゾールペプチドは多くの動物が持っている成分ですが、渡り鳥や回遊魚など季節によって住処を変える生物に豊富に含まれる成分です。身近な食材では特に鶏のむね肉に多く含まれていることがわかっています。 またたんぱく質の合成に欠かせない成分ビタミンB6も、もも肉より豊富に含まれています。たんぱく質の合成に関わる成分は他にもありますが、特にビタミンB6は筋たんぱく質の合成に最も貢献する栄養素と言われています。 ■■もも肉にはうま味成分が豊富! もも肉はうま味成分であるグルタミン酸を含むので肉自体にうま味とコクがあります。煮物やから揚げなどの和食ではもも肉が好んで使われますが、その理由はもも肉からはグルタミン酸由来の出汁が摂れるためです。 ■まとめ たんぱく質と脂質量はむね肉ともも肉で大差はありません。皮を取ればもも肉でも脂質量を大きく抑えることができます。むね肉には疲労回復に効果があるイミダゾールペプチドと筋肉の合成に必要なビタミンB6を多く含むこと、もも肉はうま味成分のグルタミン酸を含むことが大きな違いと言えます。栄養面で見るとむね肉の方が優位に見えますが、加熱時間により身が固くなりやすい特徴があるため、調理に手間が掛かるデメリットです。健康的な生活を継続するためには偏りなく色々な種類の食材をバランスよく摂ることが大切です。違いを知ってうまく生活に取り入れてみましょう。 〈参考文献〉 鶏肉の部位|もっと知りたい!お肉のこと|日本ハム株式会社 鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチドとその機能性について|農畜産業振興機構 大注目の抗疲労成分「イミダゾールジペプチド」|日本予防医薬の疲労を科学するコラム 筋肉を作る食事・栄養パーフェクト辞典|ナツメ社 ライター/田中ひろか(管理栄養士)
田中ひろか