2024年夏ドラマは終盤戦に突入「最後まで見逃したくない作品」5選
夏ドラマが終盤に入った。最後まで見逃したくない作品はどれか? 30年以上のテレビ界取材歴があり、ドラマ賞の審査員や番組批評誌の編集委員を経験してきた放送コラムニストが5作品を挙げる。
TBS『ブラックペアン シーズン2』
(日曜午後9時) エンタメ医療ドラマのロールモデルのような作品。毎回のように生と死が絡みながら、深刻な気分にさせず、肩も凝らない。プロレスのような分かりやすさと壮快さがある。 制作者側もプロレス感覚のドラマを目指しているのではないか。東城大付属病院に所属する主人公の外科医・天城雪彦 (二宮和也) らが大観衆を集めて公開手術を行っていることからも、そう思わせる。公開手術は実際に行われているものの、ここまで大掛かりではない。 善玉の東城大側と敵役の維新大学側の対立もプロレスを思わせる。維新大のトップである菅井達夫教授 (段田安則) は18日放送の第6回まで良い面を見せたことが1度としてない。ここまで悪に徹底した敵役も珍しい。 天城も典型的な善玉ではない。手術費として患者の全財産の半分を要求したり、さらに自分とのギャンブルを求めたり。しかし、菅井ほどタチが悪くない。手術の成功を第1に考えているし、後輩医師を罠に嵌めるようなこともしない。 プロレスとしてのこのドラマのカギを握っているのは菅井にほかならない。リアリティは度外視。制作者側は観る側を飽きさせないことに注力しているのだろう。 茶番劇と化していないのは助演陣のシリアスな演技が巧みだから。東城大付属病院長・佐伯清剛役の内野聖陽(55)、同医師・高階権太役の小泉孝太郎(46)、同・世良雅志役の竹内涼真(31)たちである。プロレスとシリアスのバランスが絶妙だ。
TBS『笑うマトリョーシカ』
(金曜午後10時) 見どころは第1回から一貫している。 「若き有力政治家・清家一郞(櫻井翔)のマニピュレーター(他人の心を操る人)は誰なのか」。それとは別に清家の実像も興味の的となる。操られているだけの空っぽの男ではない。事実、高校以来の盟友である秘書の鈴木俊哉(玉山鉄二)を簡単に斬り捨てた。過去にも地盤を受け継いだ武智和宏代議士(小木茂光)の秘書・藤田則永(国広富之)を容赦なく切った。穏やかな表情とは裏腹に冷徹な男に違いない。 数々の謎もまだ未解明。清家の大学時代の恋人で脚本家志望だった真中亜里沙(田辺桃子)はどこへ消えたのか? そのペンネームが清家の母親・浩子(高岡早紀)の銀座ホステス時代の源氏名と近いのはどうしてなのか。亜里沙のペンネームは劉麗蘭で、浩子の源氏名は劉浩子。偶然とは思えない。 浩子の源氏名から、主人公のジャーナリスト・道上香苗(水川あさみ)は、彼女が日本人と中国人のハーフだと突き止めた。だから、クオーターの清家も在日外国人らへのヘイトスピーチに反対しようとしているのだろう。 清家がヘイトスピーチに反対するのは意義あること。しかし、清家は出自を明かしていないから、それが明るみに出たら一波乱あるのは間違いない。政界ドラマとしての見せ場もまだある。 櫻井の演技には賛否両論があるが、清家役はハマっている。肉体派の刑事などより、頭脳派の役柄のほうがしっくり来る