静岡空港 続く人手不足 コロナ禍収束で需要好転、地上支援手薄に
■復便遅れの一因、静岡県は採用活動支援 静岡空港で地上スタッフの人手不足が続いている。新型コロナウイルス禍の収束で航空需要が好転し、就航の引き合いが増えた一方、人員体制の再構築が追いつかず、復便遅れの一因に指摘される。定期便数をコロナ禍前の水準に戻すことを当面の目標に掲げる県は「国内外の旅客取り込みは観光や経済の活性化に直結する。人材確保に全力で取り組む」とし、採用活動を支援して打開を図る。 人手不足が深刻なのは航空機の誘導や空港カウンター対応、手荷物の仕分けなどを担う地上支援業務。雇用企業のエスエーエス(牧之原市)によると、コロナ禍の採用抑制や離職で従事者が2割程度減少した。 現在は回復基調にあるものの、離職者の再就職は限定的で、未経験者は資格取得や教育訓練で現場に出るまで一定の時間を要する。人が足りないと航空会社が希望する運航時間帯に手厚い勤務シフトを敷けず、思うように就航につなげられない。コロナ禍が明けてまもなく浮上した問題といい、森浩同社取締役総務部長は「国も認識する全国的な課題。給与アップなど企業努力はしているが、業界は人材の奪い合い」と吐露する。 静岡空港は2019年度のピーク時に国内線7路線、国際線10路線の計17路線を確保していた。現在は国内線5路線、国際線2路線の計7路線。国際線は主力だった中国便の復便に遅れが目立ち、東京電力福島第1原発の処理水放出で訪日需要の回復が鈍いことも影響している。こうした中、杭州線が7月10日に再開するほか、国内線も2路線が復便予定など、明るい材料もある。 静岡空港を巡っては5月末に就任した鈴木康友知事が利活用に積極的な姿勢を打ち出したほか、リニア建設促進期成同盟会が東海道新幹線の新駅構想を国とJR東海への要望事項に盛り込み、にわかに注目されている。 県は24年度当初予算で、受け入れ体制整備に約3千万円を計上した。滝口浩一空港管理課長は「需要があるだけにもどかしい。エスエーエス社や空港運営会社との連携を強めたい」と話した。 ■観光再生 国際線が鍵 受け入れ体制整備 急務 静岡空港は国際線の増減が県内観光の活性化と深い関わり合いを見せる。 県観光政策課によると、2019年の県内の外国人宿泊者数は249万3790人で、直近の23年(速報値)は102万7640人。県幹部は国際線が10路線から2路線に減った影響が「はっきりと反映された数字」と話す。 中でも、中国便は19年当時、上海や寧波など8路線があり、中国人宿泊者数は6割を占める149万1470人に上った。23年は15万240人。 静岡空港は中国人客が回復するまでに受け入れ体制を整えておく必要があると同時に、未開拓のアジア各国からの就航も観光の再生と拡大の鍵を握る。
静岡新聞社