郷愁や趣味だけじゃない「茅葺き」再興を 長野でフォーラム
自然環境と文化を守るかやぶき(茅葺き)屋根を見直そうと、日本茅葺き文化協会主催の「第7回茅葺きフォーラム」が11日から2日間、長野県長野市の戸隠高原で開かれ、全国から集った関係者150人がかやぶきの再興・普及を目指し論議を交わしました。かやぶき屋根は衰退の一方でその良さを見直す動きも出ており、戸隠地区の現地見学でもいくつかの取り組みが強い関心を集めていました。
自然環境の循環に大きな役割果たすカヤ
日本茅葺き文化協会は、かやぶきを守りその文化を伝えていくためにかやぶき職人、建築家、研究者、自治体、一般の理解者などで構成する団体。毎年各地でフォーラムを開き、その土地のかやぶき文化を学んだり、研究報告を通じ情報交換をしています。かやぶきへの郷愁や趣味にとどまらず、自然環境の循環に果たすカヤの役割に注目しています。 フォーラムはまず戸隠神社を中心にした宗教色の強い集落の成り立ちとかやぶき住宅の間取りの特徴などを、宮下健司・元長野県立歴史館総合情報課長が講演。さらに地元の地域づくりの活動スタッフやかやぶき職人、自治体職員ら7人がかやぶき文化の周辺を多角的にリポートしました。 かやぶき職人として広く知られる長野県小谷村(おたりむら)の松澤敬夫(まつざわ・けいお)さんは、職人しか見ることのできない屋根ふきの現場の写真を示して、構造や骨組みの変化を説明。「屋根材のカヤは、輸入ものやほかの土地のものでは合わないのです」と、かやぶき住宅がその土地と深く結びついた存在であることを指摘しました。 また、「屋根ふきは集落全員が結(ゆい)という形で協力して作業を手伝い、新潟県などから来たかやぶき職人は春に来て秋に帰っていった」「職人は技術を競い、ふき替えて60年も持たせるまでに進歩したものです」などと話しました。 信濃建築史研究室の吉澤政己室長(工学博士)は、平成19年にNPO信州伝統的建造物保存技術研究会(信伝研)が行った調査で、戸隠地域の伝統的な建物314棟のうち、かやぶきのままの建物は18棟で、かやぶきを鉄板で覆ったものは237棟を数え、多くの伝統的な建物はかやぶきであることを示しました。