新紙幣の肖像3人「歴史重要度」は低めのスタート 山川教科書で登場回数を独自検証 渋沢栄一 津田梅子 北里柴三郎
戦後支えた「聖徳太子」は名実とも復活困難か
中位グループは前1000円札の夏目漱石(26点)、元1万円札等の「聖徳太子」(厩戸王)24点、現5000円札の樋口一葉(22点)、現1000円札の野口英世(18点)の4人だ。 歴史の流れを重視する教科書では、どうしても文芸作品や発見発明は「点」となり、作家・科学者などの紹介は限界がある。 夏目漱石はもちろん、今回引退する樋口一葉は国語にも登場し、野口英世は子どもに強烈な偉人伝があるため、歴史以外の加点可能性が高く、知名度では上位グループ並みだろう。 問題は「聖徳太子」だ。 戦後だけでも1946年から元100円札~1万円札と計4種類でフル活躍、日本の復興と成長を支えて、一時はお札の代名詞だった。教科書でも前の方の記述で授業で飛ばされることはない。 ただ研究成果から教科書での扱いが変わったことは有名だ。『詳説』では1980年代「聖徳太子(厩戸皇子)」の記述が今は「厩戸王(聖徳太子)」だ。 あの板を持つ肖像も強烈な印象だが、この画像と「聖徳太子」を結びつける史料がなく、平たく言えば“後に描かれたイメージの可能性があるもの”と分かり、山川教科書には一切登場しない。 現在のお札の肖像が明治以降で選ばれるのは、こういう史料の“揺れ”を避けられる側面もある。「聖徳太子」の肖像復活は、劇的な新史料が発掘されないかぎり難しそうだ。
渋沢・津田・北里は低めスタート
残る下位グループは、渋沢栄一(17点)、津田梅子(14点)、北里柴三郎(14点)、新渡戸稲造(12点)。最下位は二宮尊徳(0点)となっている。 教科書の人名は無数の中から選ばれている以上いずれも大切だが、これらの人物について知識があまりなくても、教育上それほど“マズイ”とまでは言えないのかもしれない。 新しいお札で登場する3人がいずれも点数が低めなのは気がかりだ。津田梅子は『中学歴史』に特集があるものの、本文太字扱いは渋沢栄一の『詳説』だけだ。 ただ点数の結果は、何となくではあるが、世間の相場観と一致している感じがする。大人の社会で「伊藤博文・福沢諭吉は名前しか知りません」と言うのは勇気がいるが、「渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎は名前しか知りません」は結構言えたりする。 もっとも津田梅子は津田塾大学、北里柴三郎は北里大学…名字を冠した大学という知名度の高い存在がある。その大学の創立に関係する人物だろうと推測できる。