【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…8月第2週の「米国経済」の動き
8月の失業率、新規失業保険申請件数への注目度が高まる予想
米国債券市場では、⻑期金利の指標である10年国債利回りが2年国債利回りを下回る状況、いわゆる「逆イールド」が約2年続いていたものの、5日には一時的に解消しました。過去において、中央銀行による利上げ局面では、2年国債利回りに上昇圧力がかかる一方、景気動向を映しやすい10年国債利回りは、2年国債利回りに比べ上昇しにくく、1980年代以降の経験側では、逆イールドが発生しました。 また、景気後退が始まる直前には、中央銀行による利下げへの期待から2年国債利回りは低下した一方、景気回復期待を映じて10年国債利回りは上昇したため、逆イールドは解消されています。 上述の通り、景気後退入りを想起させるシグナルが点灯するなか、次回8月の失業率に注目が集まることが予想されます。また、雇用統計の公表に先立って発表される、週次の新規失業保険申請件数などへの注目度も高まりそうです(図表5)。 特に、雇用統計の失業率は毎月12日を含む週が調査対象期間となるため、15日公表の新規失業保険申請件数が重要指標となります。
7月の雇用統計は低調だったものの、雇用は拡大傾向
全米供給管理協会(ISM)が公表した2024年7月のISM非製造業景況指数は51.4(市場予想︓51.0)と、前回6月に記録した48.8から上昇し、2ヵ月ぶりに50(景気拡大・縮小の分かれ目)を回復しました(図表6)。 米国の景気後退への懸念が高まるなか、それに拍車をかける可能性がある経済指標として注目されたものの、サービス業の企業活動が依然として底堅さを維持していることが示されました。 7月の雇用統計が低調な結果となるなか、懸念された雇用指数は、6月の46.1から7月に51.1に急上昇し、雇用の拡大を示唆する水準となりました(図表7)。 もっとも、拡大としたとはいえ、水準としては強い数字ではなく、雇用の増加を報告したのは、18業種のうち8業種にとどまっています。また、景気に先行するとされる新規受注指数も52.4(6月︓47.3)へ上昇し、これも景気後退懸念を和らげる結果となりました。もっとも、過去に景気後退入りした期間においても、50を境に振幅を繰り返しており、足もとでも同様の動きをしています(図表8)。 ISM非製造業景況指数に先んじて公表された7月のISM製造業景況指数は、6月の48.5から46.8へ悪化したものの、ウェイトの大きい非製造業を含めた経済指標が改善したことで、GDPNow※(アトランタ連銀公表)に基づく2024年7-9月の実質GDPは、前期比年率+2.9%(8日時点の予想値)と、1-3月期(同+2.8%)並みの成⻑率となることが予想されており、現状では、米国の景気後退入りが想定される状況にはないと判断されます。 ※アトランタ連邦準備銀行が、リアルタイムに米国の経済成⻑率を予測することを目的に公表している指標 一連の雇用関連指標の公表を受け、FRB高官からも景気後退入りに慎重な見方が示されています。シカゴ連銀のグールズビー総裁は、「雇用の数字は予想よりも弱かったが、リセッション(景気後退)の様相をまだ呈していない」としたうえで、「いかなる単月の経済指標にも過剰反応することは避けたい」と述べたほか、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は「労働市場が減速しすぎて、景気後退に傾かないようにすることが非常に重要だ。しかし、まだそうはなっていない」と、急速に浮上した景気後退観測を否定しました。 もっとも、FRB高官が指摘するように、景気後退入りが間近に迫っていないとしても、数日にわたる金融市場の変動(株価の急落等)は、企業の景況感や消費者マインドの悪化を通じて、企業の投資行動や家計の消費行動を抑制し、結果として景気悪化を引き起こす可能性があります。 東京海上アセットマネジメント ※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…8月第2週の「米国経済」の動き』を参照)。
東京海上アセットマネジメント株式会社
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