なぜお笑いファンは芸人に「上から目線」なのか?元 M-1 ファイナリストも感じる“ファンとのいびつな関係性”
顔ファン=悪というのは違う理由
――慣れ親しんだ『自分たちのもの』が奪われたように感じられるのかもしれませんね。以前に比べて「顔ファン」や「ワーキャー人気」についての言及も増えているように思いますが、新道さんは芸人の立場としてこれらをどう感じていますか? 「ひと括(くく)りに顔ファンとはいっても、実際は常識を持って応援している人がほとんどなんですよ。ただ、一部によくない人がいて、顔ファン全体が批判される状況になっているような気がします。たとえ推しの芸人が、顔ファンNGを匂わせたからといっても、顔ファン=悪というのは違うと思いますよ」 ――意外にも新道さんは顔ファンについては絶対的な否定派ではないのですね。 「そうですね。ただ、顔ファンがついていて、なおかつ顔ファンを嫌がっている芸人にも、それなりの言い分はあるのだと思います。 おそらく、そういう芸人たちの根底には『ネタで認められたい』という強い想いがあるんですよ。でも、頑張りが報われないことで顔ファンの存在がストレス化してしまっているのではないでしょうか」
他の芸人からイケメンイジりに耐えられないから顔ファンがストレス
――「ネタで評価してもらわないといけない」というプレッシャーもあるのかもしれませんね。 「実はそれって、他の芸人仲間からの見た目イジりに耐えられないからってことも多いんですよ。ネタがウケていないと、そういうイジリにも上手く返せなくてストレスが増大することもあると思います」 ――なるほど、イケメンってことでイジられるんですね。根本的な解決策はネタを磨くことでしかないのでしょうか。 「でも、僕はそこについては、見た目が良い悪いの問題ではなく、見た目の印象がノイズ化しないネタづくりを模索すべきだと考えていますよ」
見た目の印象がノイズ化しない「自分の見た目に合った表現」が大事
――見た目の印象のノイズ化とは? 「例えば漫才で『相方に女の子を紹介してあげる』ってネタをしている芸人がいたとして。紹介する側が、あまりにも女の子の知り合いがいなさそうな見た目だと、このネタって成立しなくなっちゃうんですよね」 ――なるほど!「モテないのが悩み」なんてネタを、いかにもモテそうな見た目の芸人がやっていても然りですね。 「ネタが上手くハマらない芸人って、そういうところがそぐわっていないパターンが本当に多いんです」 ――M-1グランプリ2023チャンピオンの令和ロマンの髙比良くるまさんも、そのためにスキンケアに注力したり、アゴにヒアルロン酸を入れるなどのビジュアル改革をしていたと聞きました。新道さんの言っていた「ノイズ除去」に通じるものがあるように思います。 「芸人たちは顔ファン云々を語るよりも前に、『自分の見た目に合った表現』について考えることが大事だと僕は思いますよ」